量子暗号に向けたカーボンナノチューブ高純度・高効率単一光子源

-高性能な室温・通信波長帯単一光子源を得る技術を理論的に発見-

慶應義塾大学理工学部物理情報工学科の牧英之准教授らは、直径約1nmの微細な一次元物質である単層カーボンナノチューブを用いて、室温において高純度と高効率を両立した単一光子源が理論的に可能であることを世界で初めて示しました。

1パルス中に含まれる光子が1個に制限された単一光子は、近年、量子暗号通信などの量子情報デバイスで注目されており、特に高集積で汎用の量子情報デバイスを実現するには、室温かつ通信波長帯において、高純度で高効率な単一光子を発生させる単一光子源が必要とされています。これまでに、当研究グループはカーボンナノチューブを用いることで、世界初の室温・通信波長帯の単一光子源を実験的に示しており、その後世界中で研究が行われています。しかし、現状の単一光子源では、高純度化と高効率化を両立することが困難であり、量子情報デバイスへの実用化に向けては、それらを両立する技術の構築が望まれています。今回、カーボンナノチューブから高純度かつ高効率な単一光子発生を実現する技術として、架橋した短尺のカーボンナノチューブに分子修飾をすることにより、その両立が達成可能であることを理論的に初めて示しました。これにより、カーボンナノチューブを用いることで、非冷却で通信波長帯での高性能な単一光子素子が開発可能であることが明らかとなり、本技術を用いることで、チップ上で集積化可能な汎用の量子暗号素子といった、次世代の量子情報素子の開発が推進されることが期待されます。
本研究は、東京学芸大学の前田優准教授と共同で行ったものです。

本研究成果は、2019年12月27日に米国化学会(ACS)のACS Applied Nano Materialsオンライン版で公開されました。

慶應義塾大学プレスリリース

プレスリリース全文

ACS Applied Nano Materials

日本経済新聞 11面 「光子1つだけ放出 量子暗号に応用も

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