シリコンチップ上のグラフェン高速発光素子を開発 ~チップ上光集積素子へ新たな道~

牧研の論文が、「Nature Communications」に掲載されました。

・プレスリリース JST慶應義塾HPJST (English)

Nature Communications

EE Times Japan

OPTRONICS ONLINE

optics.org

graphene-info

以下、プレスリリースより。

JST 戦略的創造研究推進事業において、慶應義塾大学 理工学部物理情報工学科の牧 英之 准教授らは、シリコンチップ上で動作する高速なグラフェン発光素子を開発しました。その発光素子を使った光通信を実演するとともに、光のオン/オフを高速に変化(高速変調)できるメカニズムも新たに発見しました。

現在光源として主に用いられている化合物半導体は、シリコンチップ上で高密度に集積することが困難であり、光集積回路の実現を阻む要因の1つとなっています。

本研究グループは、新たな材料系としてナノメートルサイズで制御できる炭素材料であるグラフェンを用いることにより、シリコン上に直接形成可能で超小型の新しい発光素子の開発に成功しました。この発光素子は、黒体放射であるにもかかわらず、応答時間が100ps(100億分の1秒。変調速度で10GHz(ギガヘルツ)相当)という超高速で変調可能であることを実験的に明らかにするとともに、この高速変調性が、量子的な熱輸送により実現していることも発見しました。さらに、この発光素子を用いて、実際に光通信を実演するとともに、化学気相成長(CVD)によるアレー化(多数の素子を配列すること)や大気中での動作が可能であることも示しました。

本発光素子は、シリコン上に集積可能な、高速で超小型の光源として、光インターコネクトやシリコンフォトニクスといった、高集積光技術に応用できると期待されます。

本研究成果は、2018年3月29日(英国時間)発行の国際科学誌「Nature Communications」に掲載されます。