構成 

教授
武藤準一郎
修士
岩佐茂、蔵重雅章、姫井憲雄、前田靖裕、神山和彦
学部
小沢幸弘、木村隼人、黒川敦雄、武田和活、宮崎然 

研究成果

当研究室では、光物性の立場から主に太陽電池の素材を中心に研究を展開している。

「新たな電着化合物薄膜の作製と評価」

2-6族化合物半導体In-Seについて電着法で薄膜形成をはかったところ熱処理温度573Kで新たらしいPhase、γ’-InSeを見い出した。さらに無公害材料で太陽電池としても有望な三元の1-3-6族化合物半導体、Cu-In-Sの組成比がほぼ1:1:2となる電着条件を見い出し、高温で熱処理することによりカルコパイライト構造を示し、バンドギャップが1.42eVであるCuInS電着薄膜の存在を確認してる。

「三元混晶半導体Hg1-xCdSe電着膜の作製と評価」

室温下で電解水溶液中のHg量を変えることによりウルツ鉱構造のn形Hg1-xCdSe電着膜を0.87≦x≦1の範囲で成長させ、そのバンドギャップは1.2eVから1.7eVの範囲で変化した。膜はHgの量の増加と共にそのキャリア数が増加、抵抗率が減少、又移動度は大きく変化しなかった。キャリア数より求めた活性化エネルギーは、Xの減少と共に次第に減少しX<0.88でほぼ0となった。この基礎的な結果は「光電気化学太陽電池作製」に役立っている。

「電着化合物半導体薄膜を用いた光電気化学太陽電池」

薄膜で出来た光化学太陽電池(Photoelectrochemical solar cell)を作製、その特性を半導体膜の組成、膜成長基板の種類、膜の後処理、太陽電池電解液の組成、濃度等多方面から調べ、エネルギー変換効率の向上を試みた。その結果、最大エネルギー変換効率を示すHgCdSe光電気化学太陽電池の半導体電極作製条件は(1)電着基板:Ti;(2)電着電解液組成:HgCl 0.6mM ,CdSO 1M,SeO(3)膜厚:1μm:(4)熱処理:大気中500℃、30分;(5)表面処理:1M HCl水溶液によるエッチング、で作製され、又、光化学太陽電池の電解水液はNa2S、Sともに1.5Mを含んでいた。以上の条件で作製された薄膜光化学太陽電池はAM2の擬似太陽光(90mW/cm2)に対して解放電圧:661.1mV、 短絡電流:1895mA/cm2、曲線因子FF. 0.42でエネルギー変換効率は 5.86%と高い値を得た。

「グレッチェルセルに関する研究」

光電極が直径数十nmのナノクリスタル半導体堆積構造で色素がその表面に吸着してい る高効率な色素増感型光化学電池(グレッチェル型光電池)のナノクリスタルSnO2電極作製法を確立し、電着でクロロフィルの増感をおこなったところ、ナノクリスタルの表面積の増加にほぼ相当する光電流の増加をみた。また、この増感法をホウレンソウの未精製な注出色素に適用、未精製な植物色素の増感により容易かつ低コストで作製で出来るグレッチェル型光電池の可能性を検討した。 尚、このグレッチェル型セルの電極における光電気輸送過程には不明の点も多い。当研究室では、この電極の輸送過程の解析をシミュレーションにより取りあげている。

発表論文・学会発表

  • N. Himei and J. Muto, “Preparation and properties of electrodeposited Hg1-xCdxSe films”, J. Mater. Sci. Mater. Electron. 11 (2000) 145.
  • 姫井憲雄、武藤準一郎「電着法によるHg1-xCdSe薄膜の作製と評価」第46回応用物理講演会(1999)
  • 武藤準一郎「応用物理系学科の学生実験成績評価-再提出レポートの効果-」第46回応用物理講演会(1999)
  • 神山和彦、掘米学、武藤準一郎:「電着CdSe膜の評価」、平成11年度日本 材料科学会(1999)

■ 学位論文

修士論文

  • 前田靖裕:電着法によって作製された化合物半導体に関する研究-InSe3およびCuInS2について
  • 姫井憲雄:電着法により作製したHg1-xCdx膜の諸特性
  • 岩佐茂:クロロフィル増感ナノクリスタルSnO2薄膜を用いたグレッチェル型光電池
  • 蔵重雅章:電着HgCdSe膜を用いた光電気化学太陽電池

卒業論文

  • 小沢幸弘:グレッチェルセルの色素修飾ナノクリスタル電極に関する一解析
  • 宮崎然:Cuをドープした真空蒸着CdTe膜の性質
  • 武田和活:諸ダイオードの容量-印加電圧
  • 木村隼人:Cd-In-S化合物の電着特性、容量-周波数特性に関する研究
  • 黒川敦雄:真空蒸着CdSeの作製と評価

■進路

住友電工 ソニー 旭化成 トヨタ自動車 東京大学新領域創成研究科 慶応義塾大学理工学研究科