1999年度 的場研究室

構成

助教授
的場正憲
修士課程
岡田悟志,玉澤彰英,阿波連知子,征矢野俊二,福本聡
学部
石井守,岡部博孝,鬼束晃司,神原陽一,国領洋介,竹内弾正,長沼順子

研究成果

新規なブロック層をもつ高温超伝導体の開発

素材の複合化により複合素材間に相互作用が生じ,性能の向上や新機能の発現が引き起こされる.1986年以降に発見された一連の高温超伝導体は,CuO2平面の間に岩塩型等の修飾層が挟まれたペロブスカイト関連構造をなしており,積層構造単位間の相互作用の結果,CuO2平面にキャリアーがドープされ高温超伝導が発現している.1986年から始まった精力的なペロブスカイト関連物質を中心とする物性研究の結果,数々の高温超伝導体や巨大磁気抵抗を示す磁気記憶材料が,ペロブスカイト関連物質群の中 から見出されている.我々は,人類のさらなる飛翔のためにも,新規なブロック層を有する高温超伝導体の開発に取り組んでいる.

新規な層状遷移金属オキシ硫化物の機能発現機構と物性制御

1986年から始まった精力的なペロブスカイト関連物質を中心とする物性研究の結果, 数々の高温超伝導体や巨大磁気抵抗を示す磁気記憶材料が,ペロブスカイト関連物質群の中から見出されている.我々は,人類のさらなる飛翔のためにも,無限層高温超伝導関連物質SrCoO2と重い電子系ThCr2Si2型SrCu2S2が積層した新物質Sr2Cu2CoO2S2の最適合成条件を探り,機能発現機構の解明や新機能の開拓を行っている.Sr2Cu2CoO2S2は化合物半導体であり,その積層構造ゆえにフラストレートした磁気的性質を示すことが明らかになった.中性子散乱実験により,2つの積層構造に由来する磁気ピークを世界で初めて観測し,詳しい磁気構造の解析に取り組んでいる.また,Sr2Cu2CoO2S2のCoO2平面にCuをドープすることにより系は金属に近づき,半導体・金属転移を示すようになる事が明らかになった.現在,この半導体・金属転移発現機構とその物性制御要因を探求している.

強相関電子材料の熱電変換特性と物性制御要因

強相関電子系遷移金属化合物においては,酸素2p電子と混成する強相関3d電子の存在のため,バンド理論に基づく一電子描像が破綻しかかっている.バンド理論に従う従来の半導体の電子物性には,電荷のもつ自由度のみが現れるのに対して,強相関電子系では,電荷の自由度だけでなく,スピンや軌道の自由度とも複雑に結合するスピン・電荷・軌道複合物性が発現している.したがって,強相関電子系では,高温超伝導体のような,バンド理論の予想を遥かに超える熱電特性が出現する可能性があり,次世代熱電変換材料としての展開の可能性が秘められている物質群が存在すると期待される.しかしながら,強相関電子系における熱電変換材料の探索や応用の検討はほとんどなされていないのが現状である.そこで,毒性元素を含まない強相関電子系遷移金属化合物において,高温超伝導のような,バンド理論の予想を遥かに超える熱電特性が出現させ,新世紀のエネルギー・環境問題に対する一解答を得ることを究極的な目標として,人と環境に優しい強相関電子系熱電変換物質の創製とその物性制御要因を探求している.

次世代層状半導体スピニクス材料の創製と評価

近年,II-VI族およびIII-V族希薄磁性半導体とその超構造のスピン物性を理解して 極的に制御し,応用しようとする半導体スピン工学的研究が国内・外で進められている.しかしながら,GaやZn等の半導体エレクトロニクスに登場する元素をもつ層状化 合物に関する半導体スピン工学的研究はほとんどなされていない.そこで,我々は,新規な積層構造を有する層状化合物半導体Sr2Cu2(Zn,M)O2S2やSr2Cu(Ga,M)O3Sに着目し,ドープされた磁性不純物(M)イオンによるスピン・電荷・軌道複合物性の発現機構を探った.

発表論文・学会発表・特許申請など

論文

  • H. Okamura, J. Naitoh, T. Nanba, M. Matoba, M. Nishioka, S. Anzai, I. Simomura, K. Fukui, H. Miura, H. Nakagawa, K. Nakagawa and T. Kinoshita : “Optical study of the metal-nonmetal transition in
    Ni1-xS”, Solid State Commun. 112 (1999) 91-95.

口頭発表

  • M. Matoba, S. Okada, S. Fukumoto, S. Soyano, H.Kito : “Cu-Substitution Effect on a Square-Planar CoO2 Layer in a New Layered Transition-Metal Oxysulfide Sr2Cu2CoO2S2“, The 12th International Conference on Ternary and Multinary Compounds, (2000, Hsinchu, Taiwan).
  • 福本 聡,岡田悟志,征矢野俊二,的場正憲:「新規な層状化合物Sr2Cu2CoO2S2の電 子物性」日本材料科学会(1999年5月)
  • 征矢野俊二,岡田悟志,福本聡,的場正憲:「新しい機能性層状化合物の探索・合成 と評価」日本材料科学会(1999年5月)
  • 的場正憲:「Sr2Cu2CoO2S2の物性」日本応用磁気学会超伝導マグネティクス専門研究 会(1999年7月)
  • 岡田悟志, 征矢野俊二, 福本聡, 的場正憲:「Sr2Cu2CoO2S2の磁性と電子状態」日本 物理学会(1999年9月)
  • 征矢野俊二,岡田悟志,福本聡,的場正憲:「Sr2Cu2CoO2S2の電気的性質に対するCu 置換効果」日本物理学会(1999年9月)
  • 的場正憲,鬼頭聖:「新規な強相関電子系層状遷移金属化合物の電子物性」日本応用 磁気学会シンポジウム(1999年10月)
  • 竹内弾正,福本聡,岡田悟志,的場正憲,鬼頭聖:「2次元層状物質Sr2Cu2CoO2S2の 磁性」日本物理学会(2000年3月)
  • 岡部博孝,石井守,阿波連知子,的場正憲:「強相関電子系熱電変換材料の探索」応 用物理学会(2000年3月)

■学位論文

博士論文

  • 米田征司:中温域熱電材料テルル化物の性能向上に関する研究 [ 主査:太田英二,副査:桑野博,木村敏夫,的場正憲 ]

修士論文

  • 岡田悟志:層状遷移金属オキシサルファイドの開発と物性評価

卒業論文

  • 石井守:新規n型高温超伝導体の探求
  • 岡部博孝:新しい強相関電子系熱電変換材料の探索
  • 鬼束晃司:GaO4型ブロック層をもつ高温超伝導体関連物質の物性
  • 神原陽一:多元系層状磁性半導体の設計
  • 国領洋介:擬1次元強磁性体Ca3Co2O6の電子物性に対する化学的圧力効果
  • 竹内弾正:強相関電子系2次元層状物質Sr2Cu2CoO2S2の磁性
  • 長沼順子:ペロブスカイト関連Ga酸化物を用いた新規スピニクス材料の創製

進路

慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻博士課程&修士課程,富山医科薬科大学医学部,日本IBM,富士ファコム

研究助成

  • 科学研究費補助金基盤研究(C),「新規な層状遷移金属オキシ硫化物の機能発現機構と 物性制御」
  • 材料科学研究助成基金,「強相関電子材料の熱電変換特性と物性制御要因」
  • カシオ科学振興財団,「人と環境に調和した熱電エネルギー変換素子の創製」
  • 学事振興資金特A研究,「電子状態や磁気長距離秩序変化と連動したスピングラスのエ ントロピー情報の研究」(代表:安西修一郎教授)

Dept. Applied Physics and Physico-Informatics