2001年度 相吉研究室

構成

教授:相吉英太郎
助手:田中玲子
博士課程3年:小林容子
修士課程2年:池田雄一,伊藤雄一,卜部和孝,熊田直樹,長谷部一徳,
増田和明,桝田朋巳,森下謙太郎
1年:大坂哲史,金子彰宏,菅野篤,深澤建臣,堀口奈美
学部学科4年:秋笹久,遠藤俊明,中島健,西垣明哲,野田勝之,
三浦みちる

研究概要

<相吉英太郎>

[力学モデルによる情報処理]

最適化・画像処理・連想記憶などの情報処理をおこなうことを目的として,非線形力学モデルを構築してその設計・制御をおこなう,いわば情報処理と力学の中間的な学問領域といえる「情報物理学」の体系化を目指している.2001年度は,カオス力学系による大域的最適化手法について重点的な研究をおこなった.具体的には,

(1)悪化受理法とハイブリッド的に組み合わせたカオスアニーリング法
(2)シンプレックス上の大域的最適点を探索するカオス写像
(3)主成分分析のための慣性系学習アルゴリズム

など新しい手法を考案した.中でもリプリケータ方程式に基づき新たに提案した「シンプレックス上をカオス的に挙動する離散的力学系」は,まったく新しいカオス力学系モデルとして評価できる.

[遺伝アルゴリズムの原子炉炉心管理・炉心制御への応用]

炉心管理・炉心制御の完全な自動化が不可能とされてきた沸騰水型原子炉の取替炉心設計と炉心燃焼制御の問題を,2レベル組合せ最適化問題として定式化し,またこの問題を解くための2段階遺伝アルゴリズム(GA)を開発した.特に,効率的な整数値GAの提案やIf-thenルールなどヒューリスティック手法のGAへの組み込みなどにより,実用に供する探索効率を実現し,沸騰水型原子炉の次世代型炉心管理システムの構築に成功した.

[ニューラルネットワークによる近似・モデリングと学習アルゴリズム]

2結合層を有するいわゆる階層型ニューラルネットワークに関する研究は,すでに成熟段階に至っているが,さらなる高機能化とそれによる応用の可能性を広げることを目指して,つぎのような成果をあげた.

(1) 局所的なモデルをファジィ的に複数接続することによって大域化な   モデリングが可能なニューラルネットワークのモデル
(2) 入出力および結合係数を複素数値化することによって,正則なアフィ
ン写像の近似を可能にし,図形処理能力を向上させると同時に,複素
関数の「一致の定理」基づいて汎化能力を向上させた複素ニューラル
ネットワーク
(3) 上記の応用として,フラクタルの近似・設計を複素ニューラルネット
ワークでおこなうことによる,より汎用的なフラクタル図形の設計手

(4) 非線形データのモデリングとその不動点推定を,ニューラルネットワ
ークを用いて同時におこない,その結果をカオス制御に用いる手法
(5) 非線形振動子のモデリングとその同調現象の推定をニューラルネット
ワークでおこなう手法
(6) 導関数値の近似も同時に考慮したニューラルネットワークの学習アル
ゴリズム
(7) ニューラルネットワークの高効率的なオンライン学習アルゴリズム

<田中玲子>

[線形制御系における二つの対称性]

これまで線形制御系における対称性として,系の入出力相反性に基づくものと幾何学構造から導かれる群論的対称性の二つが別々に定義され,それらの対称性をもつ系について制御論的な性質が個々に議論されてきていた.本研究では,これら二つの定義がどちらも群論的な対称性として扱えることを示し,対称な系に対するロバスト最適コントローラとして対称なコントローラをつくれることを対称な凸関数の最小化問題として示した.

[結合振動子系における時空間対称パターン形成]

自発的に周期的振動をする振動子が物理的に結合され,個々の振動子の状態が,結合されている他の振動子の状態に影響を及ぼす系を結合振動子系とする.特に,振動子が全て均質であり結合構造がある規則性を有する場合には,系全体がある対称性をもつ.このような対称性をもつ系では,系のパラメータを変えることにより様々な時空間対称パターンが生成される.さらに,これらのパターンは系の対称性のみによって決まる.本研究では,生きた粘菌を用いた振動子や化学振動子を用い,正多角形の対称性を有する環状系を構成し,これらパターンの発現の様子を明らかにした.

[均質な三次元材料におけるパターン形成の分岐メカニズム]

巨視的に均質とみなせる材料には,特徴的な幾何学パターンがしばしば観察される.本研究では,この種のパターン発生メカニズムの解明の一端として,三次元的に均質等方な材料において起こり得る分岐の仕組みを群論的分岐理論により明らかにし,分岐により発生可能な幾何学パターンを分類した.

発表論文・学会発表など

論  文

<相吉英太郎関連>
(1) 堀江亮太,相吉英太郎:“力学モデルによる大域的最適化手法
-非線形ダイナミクスと非線形最適化(解説論文)” システム/
制御/情報,第45巻,第4号, p.p.205/211,2001年4月
(2) 石井秀教,相吉英太郎:“速度誤差逆伝搬学習アルゴリズムによる
非線形力学系のニューラルネットワーク近似” 電気学会論文集C
(電子・情報・システム部門誌), 第121巻,第6号,p.p.1026/1034,
2001年6月
(3) 小林容子,相吉英太郎:“2段階遺伝アルゴリズムを用いた沸騰水
型原子炉における炉心装荷パターンと制御棒パターンの統合型最適
化” 電気学会論文集C(電子・情報・システム部門誌),第122巻,
第3号,p.p.390/401, 2002年3月

<田中玲子関連>
(4) R. Tanaka and K. Murota:“A Remark on Symmetries in Linear
Control Systems” Trans. Society of Instrument and Control
Engineers, Vol.37,No. 6,p.p. 584/586, 2001
(5) A. Takamatsu, R. Tanaka, H. Yamada, T. Nakagaki, et al.:
“Spatiotemporal Symmetry in Rings of Coupled Biological
Oscillators of Physarum Plasmodial Slime Mold” Physical
Review Letters, Vol. 87, No. 7, 2001
(6) 斉木 功,田中 玲子,池田 清宏:“均質な三次元材料における
パターン形成の分岐メカニズム”土木学会論文集,No. 694, III-57,
p.p. 259/276, 2001.
(7) 田中玲子,室田一雄:“システム制御理論における群論的対称性”
システ ム/制御/情報,Vol. 45, No. 4, p.p.177/185, 2001

国際会議

<相吉英太郎関連>
(1) Y. Kobayashi and E. Aiyoshi: “Optimization of Boiling Water
Reactor Loading Pattern Using an Improved Genetic
Algorithm”2001 IEEE International Symposium on Intelligent
Control,p.p.383/390 (2001)
(2) Y. Kobayashi and E. Aiyoshi:“Application of a Two-Stage
Genetic Algorithm for BWR Loading Pattern Optimization”
Proceedings ANS International Meeting on Mathematical
Methods for Nuclear Applications (2001)

国内講演発表

<相吉英太郎関連>
(1) 小林,相吉:“複雑系としての沸騰水型原子炉炉心系のニューラルネ
ットワーク近似”第40回計測自動制御学会学術講演会,2001年7月
(2) 森下,相吉:“ファジィ結合係数を有する階層型ニューラルネットワ
ークとその学習”第40回計測自動制御学会学術講演会,2001年7月
(3) 伊藤,田中,相吉:“周期データのニューラルネットワーク近似とそ
の結合による同調現 象の創発” 計測自動制御学会第7回創発システ
ム・シンポジウム資料 ,2001年8月
(4) 小林,相吉:“整数値GAの効率改善と原子炉の最適炉心設計への応
用”第44回自動制御連合講演会,2001年11月
(5) 増田,相吉:“離散化カオス写像と悪化受理法によるハイブリッド型
大域的最適化”計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演会,
2001年11月
(6) 浅井,深沢,相吉:“マルチエージェントによる多重状態組合せ最適
化” 計測自動制 御学会 システム・情報部門学術講演会,2001年
11月
(7) 桝田,相吉:“ニューラルネットワークによる時系列解析とその評
価” 計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演会,2001年11月
(8) 熊田,相吉:“非線形写像のニューラルネットワーク近似と不動点探
索の統合型計算法”  計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演
会,2001年11月
(9) 伊藤,相吉,田中:“分散結合系の可制御性を考慮した進化型設計
法” 計測自動制 御学会 システム・情報部門学術講演会,2001年
11月
(10)大坂,相吉:“複製方程式モデルを拡張した色画像連想記憶システ
ム” 計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演会,2001年11月
(11)卜部,相吉:“改良型複素ニューラルネットワークとそのバックプロ
パゲーション”計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演会,
2001年11月
(12)森下,相吉:“ファジィ理論を用いた複数ニューラルネットワークの
接続と学習” 計測自動制御学会 システム・情報部門学術講演会,
2001年11月
(13)小林,相吉:“遺伝アルゴリズムを用いた沸騰水型原子炉における炉
心装荷・制御棒パターンの統合型最適化” 計測自動制御学会 システ
ム・情報部門学術講演会, 2001年11月

 

学位論文

博士論文(主査)

(1) 小林容子 “モダンヒューリスティック手法を用いた沸騰水型原子炉
の炉心設計と炉心制御に関する研究”(計測工学専攻)

修士論文

(1) 伊藤雄一:結合ニューラルネットワーク振動子系の同調に関する研究
(2) 卜部和孝:複素ニューラルネットワークによる複素写像近似とそのバ
ックプロパゲーションアルゴリズム
(3) 熊田直樹:非線形写像のモデリングと不動点推定に関する研究
(4) 長谷部一徳:導関数値を用いた非線形多入力多出力写像の近似に関す
る研究
(5) 増田和明:離散化勾配法のカオス写像を用いた大域的最適化
(6) 桝田朋巳:線形化法によるオンライン学習アルゴリズムに関する研究
(7) 森下謙太郎:ファジィ結合ニューラルネットワークによる非線形関数
近似

卒業論文

(1) 秋笹 久:ニューラルネットワークによる非線形ダイナミクスのモデ
リング
(2) 遠藤俊明:対称性をもつパルス結合振動子系の数理解析
(3) 中島健:対称性をもつ結合化学振動子系の同調現象
(4) 西垣明哲:強化学習法による組合せ最適化問題の解法
(5) 野田勝之:ニューラルネットワークによる主成分分析に関する研究
(6) 三浦みちる:複素ニューラルネットワークによるフラクタル図形の生

進路

大学院:ソニー,ローム,日本銀行,J.P.モルガン・チェース・アンド・カンパニー,インサイトシステム (以上各1名),博士課程進学(2名) 学 部:三菱電機(1名)・修士課程進学(5名) 研究

助成

<田中玲子>  日本学術振興会海外特別研究員(2002年1月より2年間)


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics