2003年度 相吉研究室

構 成

教授

相吉英太郎

助手

田中玲子(日本学術振興会海外特別研究員としてCalifornia Institute of Technology, Control and Dynamical Systems に長期出張)

博士課程2年

熊田直樹,増田和明

修士課程2年

秋笹久,遠藤俊明,大坂哲史,野田勝之,三浦みちる,宮澤さや香,茂木克雄

修士課程1年

岡本卓,佐久間啓

学部4年生

静 敏志,柴野 健,陶山彰吾,堀江綾,宮原晋平,村田秀樹

研究概要

<相吉英太郎>

1. 非線形力学モデル・結合力学モデルを用いた情報処理

最適化計算・画像処理・連想記憶などを目的として,非線形力学モデルを構築して情報処理をおこなう情報処理と力学の中間的な学問領域といえる「情報物理学」の体系化を目指しているが,単位シンプレックス上に拘束されたカオス力学モデルに加えて,まったく新しい単位超球面上に拘束されたカオス力学モデルも提案し,超曲面上でのカオス最適化手法を提案した。
また,直交関係を保つよう結合させた結合型勾配系モデルを用いて,主成分を含むすべてのマイナー成分を同時並列的に探索する主成分分析手法や,大域的最適解を高い割合で探索できる離散系カオス写像の結合系モデルも提案した。 とくに近年、新しい結合系アルゴリズムとして話題となっているParticle Swarm Optimization(PSO)も力学モデルとして位置づけ、それからもカオス現象が生成することを確認した。

2. フラクタル図形のモデリングおよび設計と制御

非線形現象の一つであるフラクタル図形に関して,それを生成する力学系の近似やモデリング,さらにはその所望の図形を生成するための設計手法や制御手法を,新しい研究テーマとして取り上げている。とくに,2結合層を有するいわゆる階層型複素ニューラルネットワークにより,フラクタル図形を近似的にモデリングし,その結合係数を調整することによって,所望のフラクタル図形を形成することに成功した。この結合係数調整法には上記PSOを用いている。この手法はモデル式が既知の場合に,やはり所望のフラクタル図形を生成するためにも適用可能であり,その有効性を確認した。

3. 非線形結合振動子の同調現象の創発

非線形現象の特徴の一つは,複数の非線形結合振動子を結合させ,それら間の結合パラメータの値を適切に選ぶと,様々な同調現象を創発することである。このような結合振動子の同調現象において,所望の時刻から所望周期の非線形振動を創発させ,かつ複数の振動子を完全同調させるような,振動子自体のパラメータとそれらの間の結合パラメータを見出す手法を,とくに離散系振動子に対して提案した。そこでは,完全同調の程度を評価関数として与え,これをそれらパラメータの汎関数とみなして,これを最適化する手法である。変分法による勾配計算公式を厳密に導出し,勾配法を用いた計算法を確立した。

4. パルス結合ニューラルネットワークの設計と制御

生体の神経回路にできるかぎり忠実なモデルでして,Integrated fired Modelと称されるモデルで記述されたニューロンを素子としたニューラルネットワークである「パルス結合ニューラルネットワーク」において,所望のパルス信号を出力するような最適なニューロン間結合係数を決める学習アルゴリズムの研究を新しいテーマとして取り上げた。

<田中玲子>

1.鎖状結合振動子系における隠れ対称性

粘菌非線形振動子が鎖状に結合してつくる鎖状結合振動子系において,系の対称性のみから予想される振動パターンと,さらにいくつかのパターンを観測した.この観測したパターンから,粘菌鎖状結合振動子系には,隠れた対称性が存在することを明らかにした.この隠れた対称性は,一般の結合振動子系における境界条件の新しい考え方である.

2.バクテリア代謝ネットワークのHOTトポロジー

生物の代謝ネットワークは、緻密に設計された大局的な構造をもっている.多種類の栄養を外部から取り込み,少種類のキャリア物質とprecursor物質を作る.また,それらの組み合わせにより,生物に必要な多種類の物質が作られる.このバタフライ構造は,生物系のみに限らず,工学系や生産システム,経済システムなどにも見られる構造であり,いくつもの仕様をバランスよく実現するシステムを構築するために必要なHOT(Highly Optimized Tolerance)トポロジーである.この考え方は,ここ数年,複雑系について多く議論されているscale-free性と対極をなすものであり,代謝ネットワークはscale-freeではなく,scale-richであることを提案した.具体的にバクテリアのゲノムデータベースを用いて再構成したネットワークについて,このトポロジーがlow likelihood かつhigh performance であることを示した.また,この系の特徴を持ち合わせた単純なモデルを提案した.

3.インターネットのHOTトポロジー

インターネットについても,scale-free性がここ数年議論されているが,実際のインターネットの構造を調べてみると,scale-freeとはほど遠く,HOTに基づいたscale-rich性をもっていることがわかる.これは,価格とパフォーマンスなどをバランスよく実現した結果である.HOTトポロジーをもつモデル系について,同じサイズのscale-freeネットワークを構成し,それらの性能を比較した.

4.ガラクトース代謝系の遺伝子発現ネットワークモデル

ガラクトース代謝系では,Gal4遺伝子のregulationが緻密におこなわれている.遺伝子発現量の実験データに基づいて,この遺伝regulation系のモデルがいくつか提案されている.MatlabのSOS(sum of aquares)ツールを用いて,これらのモデルのinvalidationをおこなった.

発表論文・学会発表など

論文

<相吉英太郎関連>

  1. 熊田直樹,相吉英太郎,「ニューラルネットワークを用いた非線形時系列データのモデリングとその不動点推定の統合化手法」 電気学会論文集C,第123巻,第5号,p.p.1012/1019,2003年5月
  2. 増田和明,相吉英太郎,「シンプレックス上のカオス力学系と正規化制約付大域的最適化手法」 電気学会論文集C,第123巻,第6号,p.p.1147/1154,2003年6月
  3. 増田和明,相吉英太郎,「シンプレックス内のカオス力学系を用いた正規化不等式制約付大域的最適化」 計測自動制御学会論文集, 第39巻, 第7号, p.p.691/693, 2003年7月
  4. Y. Kobayashi and E. Aiyoshi,”Optimization of a Boiling Water Reactor Loading Pattern Using an Improved Genetic Algorithm”, Nuclear Technology, Vol.143, No.2, p.p.144/151,2003年8月
  5. 三浦みちる,相吉英太郎,「複素ニューラルネットワークによるフラクタル図形の近似と設計」電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌),第123巻,第8号,p.p.1465/1472, 2003年8月
  6. 増田和明,相吉英太郎,「シンプレックス内のカオス力学系を用いた正規化不等式制約付大域的最適化」計測自動制御学会論文集, 第39巻, 第7号, p.p.691/693, 2003年7月
  7. 森下謙太郎,相吉英太郎,「ファジィ結合した複数の局所的ニューラルネットワークによる大域的関数近似」 電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌),第123巻,第10号,p.p.1839/1846, 2003年10月
  8. 岡本卓,相吉英太郎,「非線形散逸力学系の内部状態モデルを用いた制約条件付大域的最適化手法」 システム制御情報学会論文誌, 第16巻,第12号,p.p.662/669, 2003年12月
  9. 遠藤俊明,田中玲子,相吉英太郎,「対称性を有するパルス結合振動子系における同調現象の解析」 電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌),第124巻,第2号,p.p.533/541, 2004年2月
  10. 熊田直樹, 相吉英太郎,「ニューラルネットワークを用いたカオスデータのモデリングと周期解推定」 計測自動制御学会論文集, 第40巻, 第3号, p.p.322/327, 2004年3月

<田中玲子関連>

  1. H.Yamada, R.Tanaka and T.Nakagaki, “Sequences of Symmetry-Breaking in Phyllotactic Transitions”, to appear in Bulletin of Mathematical Biology
  2. A.Takamatsu, R.Tanaka and T.Fujii, “Hidden Symmetry in Chains of Biological Coupled Oscillators,” to appear in Physical Review Letters
  3. 遠藤俊明,田中玲子,相吉英太郎,「対称性を有するパルス結合振動子系における同調現象の解析」 電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌),第124巻,第2号,p.p.533/541, 2004年2月

解説記事

<相吉英太郎関連>

  1. 小林容子,相吉英太郎, 「遺伝アルゴリズムを用いた沸騰水型原子炉の次世代炉心管理システ ム-炉心設計と炉心制御の統合型最適化」システ/制御/情報,第47巻,第6号,p.p.278/283 (2003)

<田中玲子関連>

  1. 田中玲子,高松敦子,「粘菌のみせる数理的世界」バイオメカニズム学会誌,第28巻,第1号,p.p.22/26 (2004)

国際会議

<相吉英太郎関連>

  1. K. Masuda and E. Aiyoshi, “Estimation of Periodic in Chaos of Discrete Gradient Models for Global Optimization”, SICE Annual Conference 2003 in Fukui, 2003.08.
  2. K. Masuda and E. Aiyoshi,“Global Optimization Method Using Chaos of Discrete Inertial Gradient Dynamics”,SICE Annual Conference 2003 in Fukui, 2003.08.
  3. Y. Kobayashi and E. Aiyoshi, “Combinatorial Optimization Algorithm for Permutation Using Multi-Agents and Reinforcement Learning”,SICE Annual Conference 2003 in Fukui, 2003.08.
  4. Y. Kobayashi and E. Aiyoshi, “Advanced Core Design Using Multi-Agents Algorithm”,IEEE International Conference Integration of Knowledge Intensive Multi-Agent Systems, Boston, 2003.09.
  5. 5.Y.Kobayashi and E.Aiyoshi, “Inclusion of Interactive GA in the Automatic Core Design of BWR”, Advances in Nuclear Fuel Management Ⅲ,South Carolina, 2003.10.
  6. 6.Y.Kobayashi and E.Aiyoshi, “Autonomous Distributed Approach Using Multi-agents for Automatic Core Design of a BWR”,Advances in Nuclear Fuel Management Ⅲ,South Carolina, 2003.10.

<田中玲子関連>

  1. R. Tanaka, L. Li and J. Doyle, “The Internet as a Complex System:HOT Topologies”, 23rd Annual Conference on Networks Structure, Dynamics and Function, 2003.05.
  2. R. Tanaka, A. Takamatsu and T. Fjii, “Hidden Symmetry in Chains of Slime Model Oscillators”, Workshop on Symmetry and Bifurcation in Biology, Pacific Institute for the Mathematical sciences, 2003.06.
  3. R. Tanaka and J. Doyle, “Highly-Structured Topology in Metabolism Networks”, 4th International Conference on Systems Biology, 2003.11.

国内発表

<相吉英太郎関連>

  1. 佐久間,相吉:すべての局所的最適解を探索する多体結合系最適化アルゴリズム,電気学会電子・情報・システム部門大会,2003年9月
  2. 熊田・相吉:非線形振動子における同調現象発現のための結合パラメータ推定,電気学会電子・情報・システム部門大会,2003年9月
  3. 野田・増田・相吉:マイナー成分を並列的に求める主成分分析のための超球面上の直交結合型カオス探索法,電気学会電子・情報・システム部門大会,2003年9月
  4. 秋笹・熊田・相吉:非線形写像における所望周期解実現のためのパラメータ設計,電気学会電子・情報・システム部門大会,2003年9月
  5. 増田・相吉:単位超球面上の制約条件付最適化に対する勾配法力学モデルの検討,電気学会電子・情報・システム部門大会,2003年9月
  6. 岡本・増田・相吉:超球面上の連続散逸系カオスを用いた制約条件付き大域的最適化,電気学会電子・情報・システム部門大会,2003年9月
  7. 小林・相吉:強化学習を導入したマルチエージェント最適化アルゴリズム,電気学会電子・情報・システム部門大会,2003年9月
  8. 宮澤・増田・相吉:シンプレックス上の結合系カオスモデルによる大域的最適化,計測自動制御学会システム情報部門学術講演会,2003年11月
  9. 増田,相吉:離散カオス勾配系の不動点推定による最適化手法,計測自動制御学会システム情報部門学術講演会,2003年11月
  10. 佐久間・相吉:ゲーム的均衡解のすべてを探索する増殖型多体結合系アルゴリズム,計測自動制御学会システム情報部門学術講演会,2003年11月
  11. 三浦・相吉:複素ニューラルネットワークによるフラクタル図形の設計,計測自動制御学会システム情報部門学術講演会,2003年11月
  12. 熊田・相吉:所望周期を有する同調現象発現のためのパラメータ推定,計測自動制御学会システム情報部門学術講演会,2003年11月
  13. 増田,相吉:超球面上の大域的最適化-正規直交解探索による主成分分析への応用を目指して-,第46回自動制御連合講演会,2003年11月
  14. 小林,相吉:動的環境下におけるマルチエージェントの性能評価,第46回自動制御連合講演会,2003年11月
  15. 小林,相吉:メタ最適化による大域的探索法,電気学会産業計測制御研究会,2004年3月
  16. 村田,相吉:カオス力学系としての制約条件付きPSOの提案,電気学会産業計測制御研究会,2004年3月
  17. 岡本,相吉:Combinatorial Optimization by the Nonlinear Dynamics Constrained on a Hypersphere, 電気学会産業計測制御研究会,2004年3月
  18. 増田,相吉:離散勾配系のカオスを用いた大域的最適化へのアプローチ,平成16年電気学会全国大会,2004年3月
  19. 小林,相吉:BWRの炉心設計最適化への強化学習アプローチ(Ⅱ),日本原子力学会2004年春の年会,2004年3月

<田中玲子関連>

  1. 高松,田中,藤井:鎖状粘菌結合振動子系における隠れた時空間対称パターン,第13回数理生物学シンポジウム,2004年9月

卒業論文と修士論文

卒業論文

  1. 静 敏志:多点探索法を用いたファジィ制御系の設計法
  2. 柴野 健:コンテナ船の最適荷積み問題の定式化と解法に関する研究
  3. 陶山彰吾:多点探索法による多目的最適化手法に関する研究
  4. 堀江 綾:多点探索法によるフラクタル図形の設計
  5. 宮原晋平:反応拡散方程式を用いた自律分散的色画像認識システム
  6. 村田秀樹:制約条件付大域的最適化手法とそのトラス問題への応用

修士論文

  1. 秋笹 久:非線形写像における周期解の推定手法と実現手法に関する研究
  2. 遠藤俊明:パルスニューラルネットワークのモデリングと設計に関する研究
  3. 野田勝之:大域的最適化手法による主成分分析に関する研究
  4. 三浦みちる:複素ニューラルネットワークによるフラクタル図形の設計
  5. 宮澤さや香:多体結合型離散化カオスモデルによる大域的最適化手法
  6. 茂木克雄:分子メモリ用マイクロ流体ネットワーク

進路先

日立製作所・大日本印刷・凸版印刷・豊田自動織機・アルファコンピュータ・メイテック


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics