2008年度 松本研究室

構成

准教授

松本佳宣

博士2年

アスルルニザム・ビン・アブドル・マナフ

修士2年

井口雄介 木村遙介 真壁啓司 森永秀樹

修士1年

伊藤信一郎 河野秀美 近内聡史

学部4年

大島悟 梶浦裕一 滝澤拓弥 中田啓道 松原太一 黎ジュ

研究成果

液体式傾斜センサと低電圧CMOS集積回路の開発

本研究では、液体式傾斜計の製作を目指して、電解液の電気2重層の原理を応用した容量型液式傾斜センサを試作して評価を行った。具体的には、セラミック基板上に半円形の二つの検出電極とその周りのリング型共通電極を形成して、電極に電圧がかけられると電気二重層が形成され、電解液はあたかも導体として振舞う。水平状態からその傾斜センサが傾斜すると、電極面積を覆う液体が変化して静電容量が変化する。このセンサのキャップとして、青板ガラスにサンドブラスト法により大きさΦ4.0mm、深さ2mmの円形溝を形成した。さらに、ガラス上部に液体注入用の0.4mmの穴をサンドブラスト法により形成した。そして、セラミック基板の電極上に絶縁物を形成してガラスキャップと接合して容器内に炭酸プロピレンを注入して傾斜センサを試作した。さらに、低電圧で動作可能な容量電圧(C-V)変換回路を設計、製作して、センサとこの集積回路を組み合わせて評価を行ったこの傾斜センサは電源電圧1.3Vでの動作可能であり、±60°の範囲で2%/F.S以下の線形アナログ出力が得られ、センサの分解能、応答速度はそれぞれ1.8°と0.6秒であった。

微細三次元構造形成用リソグラフィ技術の研究

 微細三次元曲面構造を形成するために、紫外線発光ダイオードアレイを用いた露光系に回転動作を与えることで露光強度が均一化され、マイクロレンズ形状などが均一性良く試作できる手法を提案した。マイクロレンズの製作は、露光・現像により得られたレジスト構造体をシリコン樹脂PDMSに転写を行い,PDMS型をレンズ鋳型として感光性光学アクリル樹脂PJ3001(JSR社製)を塗布したガラス基板に押し付けた。この状態でPDMSを透過させて紫外線を照射し成型することでマイクロレンズを試作した。従来よりも光出力の高い UV-LEDアレイを用いる事で露光時間を従来の半分である7分に設定しても、直径240μm~570μm、高さ110μm~270μmと高アスペクトで滑らかな曲面を有するマイクロレンズを製作可能であることが確認できた。

可視光通信用回路

近年、可視LEDを用いて光通信を行う可視光通信が注目されている。赤外線リモコン、赤外線LANに代表される従来の空間光通信では、光源として赤外線LED・LDを用い、受光素子として赤外線フィルターとシリコンフォトダイオードを用いている。しかしながら、可視光通信は可視光を用いるため、特定波長のフィルターの使用が難しく、太陽光や照明光が受光素子であるフォトダイオードに混入するという問題をもつ。また、照明の光量は、距離により大幅に減少するため、最小検出感度が良好でかつ大きな光量でも出力が飽和しないすなわち大きなダイナミックレンジが求められる。また、照明光通信特有の問題として、送信源が複数ある状況が考えられる。この場合、単一のフォトダイオードで検出した場合には混信を引き起こしてしまう。これらの問題を解決するため、フォトダイオードアレイを用いた受光素子とその信号処理回路をデバイスシミュレーション、回路シミュレーションを用いて設計した。その結果をもとに原理の異なる三種類のフォトダイオードとより高速な信号処理回路を0.18ミクロンCMOS技術でレイアウトと試作を行った。また平成19年度に試作したフォトダイオードアレイデバイスの上にレンズ光学系をおき、対象物の状況をフォトダイオードアレイ上に結像して、任意の場所のフォトダイオードを選択することで、送信源や照明が複数ある状況においても、任意の送信源のみから信号を受信できる事を確認したが、平成20年度はより高性能な制御用ソフトウェアの開発を行い、さらに二眼レンズシステムのずれ計算等を行い、認識率を向上させた。さらに、送信源として信号型送信ユニットを試作して可視光ID信号を送った結果、テキストデータをデータレート4.8kbps、距離2m以上で送信が可能であった。

3次元マイクロマシニングによる微小細管の製作と医療応用

南谷研究室、三木研究室と共同で3次元マイクロマシニングによるマイクロ流体デバイスの試作と解析をおこなった。前年度までの研究で、熱対流が起こらないと言われていたμ流路内に浮力流れを発生させる構造と条件、その特性等を明らかにしてきた。今年度は更に、この原理をμアレイデバイスへ応用する研究を進めた。μアレイ内の液体は流動しないために反応時間が長く、また感度が低いという問題があった。そこで、板内面に交流電極をパターンニングしたμアレイの模擬デバイスを試作し、垂直に立てて浮力流れを発生させ、その効果を測定した。その結果、分離させた状態で試験空間(縦22mm、横20mm、隙間100μm)へ導入した染色液体と透明液体は、速いデバイスで20~30分、平均で60分程度でその光学濃度の分散値が定常値(偏差5%以内)に達することが分かった。これは、μアレイ内の電極だけで試験液体を攪拌するコンパクトなデバイスが実現できることを示しており、従来の課題であったμアレイを用いた検査や試験(例えばDNAチップのハイブリダイゼーション行程)の時間短縮化、さらには、これから使用が増大すると予想されるタンパク質チップ等の課題であった高感度化への寄与が期待できる。
また、前年度に引き続き、タンパク質は除去し、かつ低イオン分子は透過するマイクロフィルター内蔵マイクロリアクタの研究開発を行った。フィルターとしてPES(polyethersulfone)ポリマーを用いている。3次元マイクロキャピラリに搭載し、かつマルチレイヤー化することで、分離物質の拡散距離を半分にしつつ、フィルターの有効面積を増大することができる。10層構造のマイクロリアクタ(24mm×24mm×0.4mm)を製作し、低イオン分子の拡散による透過を実験により計測した。人臓器のフィルタリングデバイスの腎臓と比較し、サイズ比0.1%ながら、分離能0.24%を実現した。すなわち体積あたりの分離能では腎臓の2.4倍の処理能力を有する。現在は10層構造であるが、これを1ユニットとして、縦、横、高さ方向に2×2×12ユニット組み合わせると、48mm×48mm×48mmというサイズで腎臓を同等の処理能力を有することとなり、携帯型人工腎臓への応用が期待されるものである。

発表論文

発表論文

  • Asrulnizam Bin Abd Manaf, Kazumasa Nakamura, Yoshinori Matsumoto, “Characterization of Miniaturized One-Side-Electrode-Type Fluid-Based Inclinometer”, Sensors and Actuators A, Vol.144, pp.74-82, (2008).
  •  Shinya Suzuki, Yoshinori Matsumoto, “Lithography with UV-LED array for curved surface structure”, Microsystem Technologies, Vol.14, No.9-11,pp.1291-1297, (2008).
  •  J. Onishi, K. Makabe, Y. Matsumoto, “Fabrication of micro sloping structures of SU-8 by substrate penetration lithography”, Microsystem Technologies, Vol.14, No.9-11,pp.1305-1310, (2008).
  •  Shinji Watanabe, Susumu Sasaki, Shinya Sato, Naoki Isogai and Yoshinori Matsumoto,” Direct Observation of Local Magnetic Field Generated by Micro-Magnet”, Appl. Phys. Lett. 92, 253116 (2008).
  • Asrulnizam Bin Abd Manaf and Yoshinori Matsumoto, “Low voltage charge-balanced capacitance-voltage conversion circuit for one-side-electrode-type fluid-based inclination sensor”, Solid-State Electronics, Vol. 53, pp. 63-69 (2009).

国際学会発表

  • Yoshinori Matsumoto, Takaharu Hara and Yohsuke Kimura,”CMOS photo-transistor array detection system for visual light identification (ID)”, Proc. of INSS2008, pp.99-102, June 18, 2008.
  • Asrulnizam Bin Abd Manaf, Kazumasa Nakamura and Yoshinori Matsumoto, “Development of low-voltage fluid-based inclination sensor integrated with CMOS circuitry on ceramic substrate”, Proc. Of IEEE Sensors Conference 2008, Lecce, Italy, pp. 658-661 October 26-29, 2008.
  • Y. Matsumoto, A.M Asrulnizam and K. Nakamura, “Low-voltage signal conditioning circuit for fluid-based inclination switch”, Proc. Of IEEE Sensors Conference 2008, Lecce, Italy, pp. 371-374 October 26-29 2008.

国内学会発表

  • 平原修三,棚元亮,松本佳宣,三木則尚,南谷晴之,”薄層液体中のμ浮力流れ”, 日本分析化学会第69回分析化学討論会講演要旨集(B2005),p.28,(2008.5)
  • 森永秀樹,松本佳宣,”電解液を用いた静電容量型水平センサの作成“,電気学会フィジカルセンサ研究会, PHS-08-9, pp.9-34, (2008.6).
  • 松本佳宣,木村遙介,”可視光ID用受光システムの試作“,電気学会フィジカルセンサ研究会, PHS-08-12, pp.25-30, (2008.6).
  • 平原修三,棚元亮,松本佳宣,三木則尚,南谷晴之,”μ薄層液体の攪拌“,日本分析化学会第57年会講演要旨集(D1019),p.61 (2008.8).
  • 木村遙介,中田啓道,松本佳宣,“可視光ID用フォトトランジスタアレイの評価”,第25回センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウム講演集,D5-7, pp.714-717, (2008.10).
  • Asrulnizam Bin Abd Manaf and Yoshinori Matsumoto, “Fluidic-based inclination sensor by silica coating process with low-voltage detection circuitry”, Proc. Of The symposium of sensor micromachined and application system 2008, pp. 324-328, (2008.10).
  • (招待講演)松本佳宣,”可視光通信と集積化CMOS受光素子”, MWE2008(Microwave Workshop and Exhibition), WS11-3,pp. 283-288,(2008.11).
  • 中田啓道,木村遙介,松本佳宣,”可視光ID用光源選択システムの提案と評価”,信学技報,SIP2008-184, pp.119-124,(2009.3).

研究助成

  • 日本学術振興会科学研究費補助金 萌芽研究 ( H19~H21)「紫外線発光ダイオード露光源と回転機構による微小3次元曲面形成法」
  • 慶應義塾大学福澤基金研究補助(H18~H20)「三次元マイクロマシニングによる微小細管の製作と医療応用」
  • 日本学術振興会 基盤研究(A)(分担)(H17~H20)「可視光通信における通信方式の研究」 (代表:中川正雄)
  • 情報通信研究機構委託研究(分担)(H19~H21) 「可視光通信による統合型通信ネットワーク技術の研究開発」 (代表:中川正雄)
  • 科学技術振興機構先端計測分析技術・機器開発事業 (H20~H23) 「超高効率なタンパク質スクリーニング技術の開発」 (代表:柳川弘志)

進路

Universiti Sains Malaysia
株式会社フジクラ
アクセンチュア株式会社
株式会社リコー
ソニー株式会社
東京大学大学院


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics