2003年度 松本研究室

構成

助教授

松本佳宣

博士1年

花井計、森涼太郎

修士2年

桑原啓,堰根哲平,竹本如洋,長谷川隆

修士1年

田村喜朗,井上哲

学部4年

赤松 大生,轡田 晃一,高橋 敦士,中島 太一,藤田 誠一,中原 崇

研究成果

光通信用信号処理回路

照明光通信やPOF通信用の光送受信LSIの設計・評価を行った。送信LSIとし
ては、ローム株式会社3.3V・0.35μmCMOSプロセスを用いて数10mA以上の電流
を駆動できるLED駆動回路とフィードバック制御を用いて光出力を一定に保つ
回路ならびにモニター用フォトダイオードを併せて集積化した。LED駆動回路
は4つのLEDが並列駆動できるようになっている。また、照明光通信用では一
定光量で照明した光の上に光量変調した光をのせるためPulse LevelとBias
Levelを調整できるようにした。試作したチップのLED駆動部の特性を測定した
ところ、電源電圧3.3VにおいてそれぞれPulse Levelで20mA、Bias Levelで
40mAまでの電流を制御できる事が確認できた。
続いて、この駆動回路に超高輝度赤色LED(HP EG08-X1000, 6500mcd at
20mA, 626nm)と超高輝度青色LED(日亜 NSPB500, 2000mcd at 20mA, 470nm)、
超高輝度緑色LED(3400mcd at 20mA, 525nm)、光リンク用赤色LED(浜松ホトニ
クスL7726 fc=100MHz 650nm)を接続して駆動実験を行った。光リンク用赤色
LED(浜松ホトニクスL7726 fc=100MHz 650nm)からの光をフォトIC(浜松ホト
ニクスS7727,帯域156Mbps)に入射してその出力を測定した結果、試作した
LED駆動回路は150Mbps以上の応答速度を有している事が確認できた。また、高
輝度白色LED(日亜 NSPW500BS, 6500mcd at 20mA)を4つ接続して並列駆動を行
いフォトICで検出したところ、応答速度は80Mbps程度であり比較的高速である
ことが確認できた。
光受信LSIに関しては0.35μm CMOSプロセスを用いてLSIを試作した。アクセ
ス網光通信の普及には、受光モジュールの低価格化が不可欠であり、それを実
現するため従来別チップ構成であったフォトダイオードと全差動型トランスイ
ンピーダンス回路、リミッティングアンプならびに高周波バッファをワンチッ
プに集積化した素子の試作を行った。p型拡散層とn型ウェルで形成されるフォ
トダイオードとRGC型トランスインピーダンスアンプを用いる事でフォトダイ
オードの寄生容量が大きい場合にも高い利得を達成できる事を示した.試作チ
ップをパッケージと評価ボードに実装して高周波測定系を用いて測定を行った
結果,600Mb/sにおいて良好なEyeパターンが得られ,BER10-9を達成する事が
可能な最小受光感度は600Mb/sに対して-10dBm,1Gb/sに対して-7.2dBmとなっ
た.この研究の過程で、ワンチップ化に適した新規フォトダイオードの構造を
発案して慶應義塾大学知的資産センターより特許出願を行った。
一方、照明光通信おいては高感度化を図るために受光径の大きなフォトダイ
オードを並列接続する事が有効であるが、これを行うとフォトダイオードの寄
生容量が大きくなり、アンプ内の抵抗RによるRC遅延特性によって応答速度
が制限される。そこで、フィードバック技術を用いてアンプの入力インピーダ
ンスを小さくして応答速度を向上させる専用のLSIを試作した。このLSIに4つ
のPINフォトダイオード(浜松ホトニクスS5972)を並列接続した表面実装型評
価ボードを製作して、それに高出力LDの光を入射してEyePatternを測定した。
その結果、300Mbps程度の応答速度を有している事が確認できた。

クロムマスクによるグレイスケールリソグラフィーの研究

受光素子の上にマイクロレンズ等を形成する技術としてグレイスケールリソ
グラフィ技術に着目してその基礎研究を行った。グレイスケールリソグラフィ
は、濃淡を持たせたフォトマスク(グレイスケールマスク)を用いて紫外線の
透過量を変化させて、感光材料に到達する光量を制御する技術である。感光材
料を現像するとその光量に応じて感光材料の溶ける量が変化するためその高さ
を変化させる事ができる。この感光性材料の形状をドライエッチング技術を用
いてガラス等に転写する事でマイクロレンズをバッチプロセスで製作する事が
可能になる。グレイスケールマスクの作製方法としては、HEBSガラス(High
Energy Beam SensitiveGlass)やハーフトーン法が報告されているが、いずれ
も価格面での課題が多く、マスクパターン作製CADも十分に整備されていな
い。そこで、本研究では画像処理で用いられるビットマップに注目して、形状
の数式データを濃度情報に変換した上で座標変換等の画像処理を用いてレンズ
やプリズムのパターンを作成できる手法を開発した。さらにそのデータをハー
フトーンパターンに変換して電子ビーム描画装置を用いてクロムマスク上に描
画した。そのパターンを反応性ドライエッチング装置を用いてクロムに転写す
る事でグレイスケールマスクを製作した。
次に、このマスクを用いてポジ型とネガ型の2種類の厚膜レジスト
(AZP4620日本クラリアント、SU-8 MicroChem Corp.)に露光を行った。その
際に、表面荒れを抑えるためにマスクとレジストの間にギャップを設けてクロ
ムパターンをぼかして露光を行った。このぼかし量を露光シミュレーションと
実験の両面より検証した結果、ギャップ80ミクロンが最適点であった。ポジレ
ジストとネガレジストへの露光実験の結果、ポジレジストの方が高さの制御性
に優れておりAZP4620においては露光量2.2J/cm2においてグレイスケール値に
よるレジスト膜厚の制御幅が最も広くなった。以上の、基礎実験を踏まえてフ
レンネルレンズ用のグレイスケールマスクを作成して、ポジレジスト
AZP4620にフレンネル形状を作成した。レジストの高さの差は、最大で6ミクロ
ンが得られた。今後は、このレジストの高さの差をより大きくしてさらにその
パターンをガラスや石英などに転写してプロセス全体の条件をとりまとめる事
が必要である。それらの条件をマイクロレンズの光学デバイス設計にフィード
バックする事で、適切な性能を持ったマイクロレンズの作製が可能になると考
えられる。

感光性ガラスの3次元加工によるマイクロリアクタの研究

インクジェットプリンタと光学縮小系を利用してグレイスケールマスクを作
製して,これと感光性ガラスを用いた3次元微細加工技術を確立した.製作し
たグレイスケールマスクで感光性ガラスを露光した後,熱処理を行いフッ酸溶
液中でエッチングをしたところ,グレイスケール値に対応したエッチング深さ
が得られ最大1.5mm程度の切削が可能であった.感光性ガラスはエッチング後
に表面が荒れるため,ELID研削という方法を用いて表面荒れを取り除いた.ガ
ラスの蓋を水ガラスにより接着し,ハトメをつけてマイクロリアクタを作成し
た.

静電容量型センサ用容量検出回路

近年,研究開発が盛んに行われている静電容量型センサ用の微小容量検出回
路を設計した.一つの回路で3軸センサの検出ができるように,3つのスイッ
チトキャパシタ方式の容量検出器を6相クロックで駆動する構成とした.ま
た,発振回路と利得約50倍の非反転増幅器も併せて集積化した.スイッチトキ
ャパシタと非反転増幅器には雑音を減らすためにPMOS入力の 演算増幅器を用
いた.また,演算増幅器のオフセットの影響を低減するためオフセット補償方
式の容量検出方式を採用した.この回路はフェムトファラッドオーダーの微小
容量検出が必要な加速度センサなどの分野への応用が期待される.

発表論文

  • Y. Matsumoto, Y. Awatani, K. Kato, Damage Free Dicing Method for MEMS Devices, 電気学会論文誌 E, 123巻7号, pp.255-256,(2003)
  • 中丸 文雄、松本 佳宣,  無電解めっき法によるガラス貫通配線の形成, 電気学会論文誌 E, 123巻8号, pp.313-314,(2003)
  • 花井 計、松本 佳宣, 微小クロムパターンを用いたグレイスケールリソグ ラフィーの研究, 電気学会論文誌 E, 123巻10号, pp.410-415,(2003)
  • 森 涼太郎、松本 佳宣,  エマルジョングレイスケールマスクの紫外線透過量と感光性ガラスの3次元加工, 電気学会論文誌 E, 123巻11号, pp.499-503,(2003).
  • 桑原 啓, 松本 佳宣, ” 短距離通信用 CMOS集積化光受信器の開発”, 電子情報通信学会論文誌C, (掲載決定).

国際学会発表

  • R. Mori, Y. Matsumoto, Three-dimensional Micro Capillaries formed by Gray-Scale Lithography of Photosensitive Glass, Proc. of the micro-TAS, 7th International Conference of Micro Total Analysis System, pp.203-206, 2003.10.
  • K. Hanai, Y. Matsumoto, ”Comparison of microchrome patterns in gray scale lithography”, Proceeding of SPIE-The International Society for Optical Engineering, Vol.5342, pp.221-228, 24-29 January 2004.

国内学会発表

  • K.Hanai, Y. Matsumoto, A study of gray scale lithography with a chrome mask, Proc. of the 20th Sensor Symposium, pp.407-410, (2003.7).
  • R. Mori, Y. Matsumoto, UV Light Transparency of Emulsion Gray-Scale Mask and 3-D Micro Machining of Photo Sensitive Glass, Proc. of the 20th Sensor Symposium, pp.215-218 (2003.7)
  • 桑原 啓, 竹本 如洋, 松本 佳宣, 短距離通信用 CMOS集積化光受信器の開発, 電子情報通信学会技術研究報告 ICD2003-81, pp7-12, (2003.9).

特許

2003年9月10日,フォトダイオード及び集積化光受信器,学校法人慶應義塾,
特願2003-317992

進路

日本電信電話株式会社
株式会社NTTデータ
株式会社日立製作所
株式会社リコー
株式会社ナナオ
日本情報産業株式会社
慶應義塾修士課程進学 4名


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics