構成

助教授

松本佳宣

博士3年

花井計、森涼太郎

修士2年

井上哲、赤松大生、轡田晃一、高橋敦士、中原崇、宮原晋平

学部4年

青野 聖、磯貝 直樹、大西 淳平、鈴木 慎也、和田 慎太郎、近藤 洋一郎

研究成果

全シリコン量子コンピュータ用微小磁性体に関する研究

本研究では、全シリコン量子コンピュータで必要となる量子ビットアクセスに不可欠な微小磁性体の構造設計と微細加工を行った。磁性体材料としてパーマロイに注目して磁性体の加工と評価を行った。この微小磁性体は、パーマロイを数ミクロン以下に加工したものであり、今年度は新たにCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて加工の精度の向上を行った。この微小磁性体を核磁気共鳴装置(NMR)に入れた場合に生成される磁束密度勾配は、5T/μmであることが磁気シミュレーションから計算された。この磁束密度勾配を検証するために、微小磁性体の上側に核スピンを持つアルミニウムとスピンを持たないチタンの多層膜を形成して、その試料をNMR中で測定してアルミニウムに対する核磁気共鳴周波数の測定を試みた。その結果、微小磁性体の影響によるアルミニウムの核磁気共鳴周波数のシフトが確認された。

微細三次元構造形成用リソグラフィ技術の研究

微細三次元構造を形成するためにグレイスケールリソグラフィ技術に注目して、画像処理を取り入れたマスク設計法と試作を行った。グレイスケールリソグラフィ技術は、濃淡を含む特殊なマスクを用いることで露光量を変化させる手法であり、本研究ではクロムの微小ドットで擬似的に濃淡を表すハーフトーン法を用い、電子ビーム描画法およびプラズマエッチングによってマスクを作製した。そして、基板透過露光法と露光部分が硬化する感光樹脂を用いて、従来は困難であった高アスペクト比の自由曲面を形成した。樹脂の塗布条件に制約が少ないため、200?m以上の超厚膜を得ることも可能であり、化学増感型ネガレジストを用いて高さ250?mのレンズアレイ等を試作・評価した。さらに、露光系に傾斜・回転機構を取り入れる手法について研究を行った。傾斜させた試料ステージを回転させることで、従来は困難であった逆傾斜構造を高い均一性をもってアレイ状に作製することが可能となった。また、露光系に回転動作を与えることで露光強度が均一化されるため、紫外線発光ダイオードアレイを用いた大面積露光方法を考案してその検証を行った。最後に、立体構造に対するレジストの塗布方法と露光技術を研究した。立体構造に均一にレジストを塗布するため、ビーム成形ノズル式のスプレー装置を改良しながら様々な基板の形状に適する塗布条件を求めた。また、多数の微小梁構造に同時にパタニングをするために、上面・両側面を一括で露光できる斜め露光法を新たに提案した。

グレイスケールマスクと三次元マイクロキャピラリの製作法と応用に関する研究

グレイスケールマスクの製作方法として、高解像度液晶ディスプレイに表示された原画を乾板に縮小転写する方法を提案した。さらに、白黒パターンを高解像度液晶ディスプレイ上で高速に切り替え表示して、各部の露光時間を所望の値に変化させることでより階調数の高い乾板を製作する手法を提案した。この乾板を用いて、厚膜ネガレジストを透明基板側から露光をする基板透過露光法により最大高さ400?mの微細三次元構造体を基板から剥離することなく形成した。さらに、このレジスト構造体を鋳型としてシリコン樹脂に形状を転写することで、透明度と生体適合性を高めた微細三次元構造体を形成する手法を確立した。さらにこれらの手法を用いて三次元構造を有するマイクロキャピラリを試作して、その評価を行った。様々な三次元形状を設けたキャピラリ内の流れを数値解析により計算して、その結果をもとに三次元マイクロキャピラリを設計・試作した。そのキャピラリに対し、指示薬、マイクロビーズ並びに赤血球を用いた流れの観察を行った。蛇行パターンを設けたキャピラリでは2液の境界部分が強く曲げられ、混合が促進する様子が指示薬の呈色から観察された。深さを周期的に変化させたキャピラリでは、浅い部分と深い部分で約6倍の速度差をマイクロビーズ・赤血球に周期的に与えることができた。これらの観察結果は数値解析の結果と良く一致しており、三次元マイクロキャピラリにおいて液体混合や流体の加減速といった新規の機能を付加できたことを示している。

集積回路

近年、研究開発が盛んに行われている静電容量型センサ用の微小容量検出回路を設計した。一つの回路で3軸センサの検出ができるように、3つのスイッチトキャパシタ方式の容量検出器を6相クロックで駆動する構成とした。また、発振回路と利得約50倍の非反転増幅器も併せて集積化した。この回路はフェムトファラッドオーダーの微小容量検出が必要な加速度センサなどの分野への応用が期待される。
他の研究課題として、光インターコネクション等の短距離間光伝送を目的とした光送信回路の設計を行った。高出力LEDを駆動するのに必要な数十mA以上の電流を流すために、ゲート幅の小さいトランジスタを多数並列に並べることでゲート抵抗の増加を防ぎ、またアルミ配線やコンタクトホールでの電流許容量を超えないように配慮した。また、複数LEDを同時に駆動できる駆動回路に関しても設計、レイアウトを行った。試作したチップの駆動部の特性を計測したところ、80mA程度までの電流を任意に駆動できることが確認できた。

発表論文

  • Dong F. Wang, A. Takahashi, Y. Matsumoto, K.M. Itoh, Y. Yamamoto, T. Ono and M. Esashi, ” Magnetic mesa structures fabricated by reactive ion etching with CO/NH3/Xe plasma chemistry for an all-silicon quantum computer”, Nanotechnology 16, pp.990-994 (2005).
  • 花井 計,田村 喜朗,松本佳宣,”高アスペクト比立体形状への配線パターン露光法の開発”, 電気学会論文誌 E, 125巻6号, pp.280-281(2005).
  • 花井 計,清水 さやか,松本佳宣,”バイナリオプティクスによるネガ型レジストの三次元形状”, 電気学会論文誌 E, 125巻10号, pp.424-425(2005).
  •  Kei Hanai, Takashi Nakahara, Sayaka Shimizu, Yoshinori Matsumoto: “Fabrication of Three Dimensional Structures by Image-Processing Technique”, Sensor and Materials(掲載決定).
  • 花井 計,中原 崇,鈴木慎也,松本佳宣,“傾斜回転による三次元加工法”, 電気学会論文誌 センサ・マイクロマシン準部門誌(掲載決定).

国内学会発表

  • 宮原晋平,青野 聖,松本 佳宣,“可視光通信用LEDドライバーの試作と可視光LEDの応答特性の評価”,信学技法,ICD2005-44(2005-07),pp.25-30,(2005).
  • 轡田晃一,松本 佳宣,“3軸容量型加速度センサ用検出回路に関する研究”,信学技法,ICD2005-53(2005-07),pp.77-82,(2005).
  • 花井 計,中原 崇,松本佳宣,“傾斜回転ステージおよびSU-8による逆ハング構造の作成”,第22回センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウム講演集, C5-5, pp.516-519, (2005).

進路

京王電鉄株式会社
国立大学法人 埼玉大学工学部電気電子システム工学科
(株)NTTファシリティ
日本たばこ産業株式会社
キヤノン株式会社 2名
アルプス電気株式会社
東京工業大学大学院
起業