■構成

准教授

田中敏幸

博士2年

米川雅士

博士1年

Kok Liang Tan

修士2年

榮枝純一,清水 聡,吉澤 聡,渡部伸一郎

修士1年

秋山菜穂,磯亜由美,狩田裕史,小林亮介,近藤勝樹,鈴木彩子,野村昌史

学部

上森あゆみ,種村光訓,林 昌輝,松下 孝,渡辺朝子,渡邉奈々

 

■進路

ソニーエンターテインメント
NTTデータ
GE
みずほ銀行
NECソフト
日立製作所
三井住友銀行
大学院修士課程進学

■研究成果

(1)X線CT検査に関する測定方法および3次元再構成方法

現在,X線CT検査は医療の分野だけでなく工業の分野にも広く応用されている.その主な使用用途としては,工業用製品に組み込まれるICチップや回路基盤などに欠陥がないかをX線CT技術を用いて非破壊で検査するというものである.産業用製品が複雑化するなかで,その内部状態を高い精度で迅速に,かつ低コストで非破壊検査することに対する需要はますます高まっている.そのような需要を踏まえて現状の問題点としては測定および再構成処理に多くの時間を必要とすること,測定視野の確保と拡大率の向上の両立が困難なこと等が挙げられる.さらに従来の方法では測定視野を確保するために大型なX線検出器を製造する必要があり,コストの問題も抱えている.そこで本研究ではこのような問題を改善する4つのX線CTシステムの実装,開発をおこなった.現状の問題点を改善する4つのX線CTシステムを開発した.これらのうち3つ目の技術までは実際の装置にも搭載され,十分実用に耐えうる結果が得られている.

(2)傾斜型X線CT画像の高精度3次元再構成手法

本研究では傾斜型CT再構成の垂直方向画像精度劣化の問題に対して,補間用二重arcスキャンを新たに加えたシステムを導入しその精度改善を行った.シミュレーション実験の結果,提案手法は高さ方向の画像伸びの問題を改善し,画像全体の再構成精度も向上することが確認された.実データによる実験でも同様の精度改善が見られ,提案手法の実物体の検査における有効性も確認された.

(3)顔三次元形状のカラーストライプ投影法を用いた再構成

本研究では,近年広く普及しているDLPプロジェクタとUSBカメラを用いて容易に構成できる装置により人に対して低負荷で高精度な顔形状の三次元再構成を行うことを目指した.撮影方法や投影するストライプを改善することにより,安価な機器を用いて容易に構成できる装置により,1秒程度の撮影時間と人に対して低付加な顔形状の三次元再構成を行うことができた.可視化データからは,一部の部分においては正確に再構成出来なかったが,概ね正しく再構成できたことが確認できた.また,ボーリング球を用いた精度評価では,平易な形状のため顔の再構成の際発生した値が大きく飛ぶ現象が起こらなかったこともあるが,誤差が1.0mm以下と高精度であることが確認され,本研究の主目的である顔面神経麻痺の診断補助システムの三次元化への適用可能性を示せた.

(4)掌紋を用いたバイオメトリクス認証

本研究では,携帯電話に搭載することを最終目標とした自然光下で手の平もカメラも固定しないという撮影環境に対してロバストである掌紋を用いたバイオメトリクス認証アルゴリズムを提案した.自然光下で,手の平もカメラも固定せず撮影を行う掌紋を用いた認証を行うことができたが,実用化させるには,まだ認証精度改善が必要である.認証精度を向上させるには,サブピクセル化を行って回転角・拡大率算出の精度を向上させるほか,画像の3次元歪みの補正を行うシステムの導入が必要である.

(5)SVMを用いた胃腺腫の重症度判別方法

病理医の負担軽減,画像判別基準の定量化という課題を解決するために,病理画像診断システムの構築が行われている.本研究で取り扱っているのは胃腺腫の重症度判別システムである.先行研究では診断システム構築にあたり,重点的に研究が行われたのは前処理,特徴量算出である.そこで本研究ではマハラノビスの汎距離という判別分析法を見直し,その方法としてサポートベクターマシーン(以下SVM)を用いることで先行研究により作成された胃腺腫の重症度判別システムにおける精度を改善することを目的とした.胃の画像診断システムにおいてSVM用いてパターン分類を行ったところ,正判別率は先行研究より1.9%改善した.本研究においてSVMは有効な手段であると言えるさらに未知データに対する精度を向上させるために非線形SVMによる分類についても検討していく必要がある.

(6)単一基準局での長基線DGPSの測位精度向上

GPSの測位には,単一受信機で行う単独測位と,位置が既知である基準局を用いる相対測位がある.相対測位の一つであるDGPS (Differential GPS) は,基準局側で擬似距離誤差を測定し,これを利用してユーザ側の誤差補正を図る方式であり,単独測位に比べ高い測位精度を得ることができる.しかし,DGPSには基準局とユーザとの距離(基線長)が長くなると測位精度が悪化するという問題がある.また,発展途上国などインフラの整っていない地域で多数の基準局を設置することや,海上等で近くに基準局を確保することは難しい.そこで本研究では単一基準局での長基線DGPSの測位精度の向上を目的とする.補正精度の悪い低仰角衛星の影響を小さくすることで,長基線DGPS測位の改善を目指す.提案手法により,長基線DGPSでの測位精度向上に成功した.衛星仰角に関する重み付けでは,合成2次関数型で最も精度を改善できた.また,バイアス誤差補正により基線長に伴う確度のずれを抑えられた.

(7)GPSによる走行中の二輪車の高精度測位

本研究では,走行する二輪車において測位実験を行ない,捕捉衛星数の激しい変化を確認した.また,車体傾斜時には,傾斜させた方向と反対側の衛星が捕捉できず,衛星配置に偏りが生じることも確認した.これらの現象が起きた時刻とその前後では,測位結果が乱れ,測位精度が悪くなることを突き止めた.これらの現象が頻繁に起きる二輪車測位において,従来の測位計算法では測位できない時間が生じるなど,測位方法に限界がある.捕捉できなくなった衛星の情報を推定・補完することでこれらの問題点を軽減し,走行する二輪車の高精度測位を目指した.欠損データを補完することにより,従来手法では測位できない時刻の測位ができ,測位の継続性が向上した.また,カルマンフィルタを用いることにより飛びのない滑らかな軌道を得ることができた.

(8)ウェーブレット変換による自動採譜

人間の感覚に基づいた採譜は,音楽に対する「知識・経験」が要求される.また,知識・経験が豊富だとしても,「時間・労力」が必要となる.これらの問題を解消するために,コンピュータによる自動採譜の研究が行われてきた.しかし,雑音・倍音の除去など未だ解決していない点も多い.特に,倍音のみを除去し発音周波数を抽出するプロセスは確立していない.これらの問題について,ウェーブレット変換(以下WT)を用いて解決を試み,解析結果を元に採譜を気軽に行えるツール構築を行った.WTを用いた事で,周波数解析精度が向上した.また,雑音によって発音周波数帯が分割されても,倍音除去によって発音周波数の一部が消去される事は無いため,倍音のみを除去するプロセスを確立する事ができ,採譜ツールが構築出来た.

■発表論文・学会発表・特許など

原著論文

  • 田中敏幸,國弘幸伸: 三次元特徴点の移動量による顔面神経麻痺評価法,Facial Nerve Research, Vol.26, pp.58-60,平成19年 3月
  • Toshiyuki Tanaka,Ken Nakajima:Accuracy Improvement of GPS Measurement under Bad Condition, International Journal of Innovative Computing, Information and Control, Volume 3, Number 3, pp.481-494, 平成19年 6月
  • Toshiyuki Tanaka,Satoru Torii,Iukei Kabuta,Kunio Shimizu,Masaru Tanaka:Pattern Classification of Nevus with Texture Analysis, Transactions on Electrical and Electoronic Engineering, Vol.3, pp.143-150, 平成20年 1月

解説論文

  • ・田中敏幸,坂上勝彦: 論文特集号「安全・安心のための先端センシング技術」について,計測自動制御学会論文集,平成19年 9月

国際会議

  • Satoshi Yoshizawa, Toshiyuki Tanaka, Kazuo Kikuchi: The Method of High Accuracy 3D Reconstruction for Oblique X-ray CT Images, SICE Annual Conference 2007, pp.146-150, 平成19年 9月
  • Shinichiro Watanabe, Toshiyuki Tanaka, Eizaburo Iwata: Vein Emphasis Filter for Biometric Authentication, SICE Annual Conference 2007, pp.690-693, 平成19年 9月
  • Ayako Suzuki, Toshiyuki Tanaka, Teruaki Oka: Telemedicine System of Pathological Image using the Internet, SICE Annual Conference 2007, pp.694-697, 平成19年 9月
  • Yuji Karita, Toshiyuki Tanaka, Isao Kabaya, Mikiya Kano, Isamu Iwayoshi: Tumor Detection Method of Small Animals on X-ray Images, SICE Annual Conference 2007, pp.698-702, 平成19年 9月
  • Tan Kok Liang, Toshiyuki Tanaka, Hidetoshi Nakamura, Akitoshi Ishizaka: A Neural Network based Computer-Aided Diagnosis of Emphysema using CT Lung Images, SICE Annual Conference 2007, pp.703-709, 平成19年 9月
  • Junichi Sakaeda, Toshiyuki Tanaka, Takanobu Kunihiro: 3-D Reconstruction using Color Stripe and its Application to Grading of Facial Palsy, SICE Annual Conference 2007, pp.787-790, 平成19年 9月
  • Nao Akiyama, Masashi Yonekawa, Toshiyuki Tanaka: Improvement of GPS Positioning Accuracy by Ionospheric Delay Correction, SICE Annual Conference 2007, pp.1766-1769, 平成19年 9月
  • Masashi Nomura, Masashi Yonekawa, Toshiyuki Tanaka: GPS Orbit Determination using Several Reference Stations, SICE Annual Conference 2007, pp.1770-1773, 平成19年 9月
  • Tan Kok Liang, Toshiyuki Tanaka, Hidetoshi Nakamura, Akitoshi Ishizaka: Classification of Emphysema using Fractal Features and Neural Network, Malaysia-Japan International symposium on advanced Technology 2007, MJISAT-294, 平成19年11月

口頭発表

  • 田中敏幸,水尾佳弘,岡輝明:病理学的形状特徴量による大腸腫瘍の悪性度判別,平成19年 電気学会電子・情報・システム部門大会,平成19年 9月
  • 田中敏幸: パターン計測による腫瘍診断,SICE2007 Workshop Life Science and SICE Technologies – Toward Collabolation among SICE Technical Divisions,平成19年 9月
  • 米川雅士,田中敏幸: 搬送波を利用した高精度衛星測位方法の可能性と実現,第24回センシングフォーラム資料,1A2-3,pp.37-41,平成19年10月
  • 磯亜由美,田中敏幸:特徴点移動量による顔面神経麻痺評価法における顔特徴点算出の自動化,第24回センシングフォーラム資料,2A2-3,pp. 222-226,平成19年10月
  • 榮枝淳一,田中敏幸:カラーストライプを用いた顔形状の3次元再構成とその応用,第24回センシングフォーラム資料,2B1-2,pp. 251-256,平成19年10月
  • 吉澤聡,田中敏幸:傾斜型X線CT画像の高精度3次元再構成手法,第24回センシングフォーラム資料,2B1-3,pp. 257-262,平成19年10月
  • 渡部伸一郎,田中敏幸:遺伝的アルゴリズムを用いた静脈強調フィルタ,第24回センシングフォーラム資料,2B1-5,pp. 269-273,平成19年10月
  • 野村昌史,田中敏幸,米川雅士:少衛星数下における測位方法の提案,GPS/GNSSシンポジウム2007, p.283,平成19年11月
  • 松下孝,田中敏幸,米川雅士:単一基準局を用いた長基線DGPSの測位精度向上,GPS/GNSSシンポジウム2007, p.286,平成19年11月
  • 林昌輝,田中敏幸,米川雅士:GPSを用いた二輪車走行時の測位計算法,GPS/GNSSシンポジウム2007, p.287,平成19年11月
  • 秋本菜穂,田中敏幸,米川雅士:サイクルスリップ時における最適な測位復元手法,GPS/GNSSシンポジウム2007, p.288,平成18年11月
  • 上森あゆみ,田中敏幸:ウェーブレット変換による自動採譜,第2回パーソナルコンピュータ利用技術学会全国大会,B2-1,pp.79-82,平成19年12月
  • 渡邉朝子,田中敏幸:病理画像診断における判別分析法,第2回パーソナルコンピュータ利用技術学会全国大会,B4-1,pp.111-114,平成19年12月
  • 渡邉奈々,田中敏幸:掌紋を用いたバイオメトリクス認証,第2回パーソナルコンピュータ利用技術学会全国大会,B4-2,pp.115-118,平成19年12月
  • 田中敏幸:腫瘍の悪性度評価のための判別分析法,電気学会研究会資料,医用・生体工学研究会,MBE-08-34, pp.21-26,平成20年 1月

特許申請

  • 田中敏幸,森田泰士:楽譜生成装置,平成19年 4月,出願番号:特願2007-101043,貴社整理番号:000001179