構成

教授 本多 敏

大学院 説田 崇(M2) 大川 晋平(M1) 小河 正一(M1) 工藤慎太郎(M1) 田沼 智宏(M1)

学部 青山 敦(B4) 井上 剛(B4) 加藤 隆志(B4) 鈴木 尋之(B4) 中野 裕介(B4)

研究成果

「逆問題とプロセストモグラフィ」

神経線維伝導速度分布の推定法,MEG(脳磁界)信号処理法など生体電気磁気現象の解析や 逆問題解法の研究と,管内流速分布を電磁誘導信号処理により推定するプロセストモグラ フィの研究を継続している.

「ウェーブレット変換を用いた単一試行誘発脳磁界信号処理」

誘発脳磁界計測では,多数回の刺激結果を加算平均することが必要となるが,MEGの高時 間分解能という特性をいかすためには,個別の誘発脳磁界を検出することが望ましい.本 来非定常な脳活動成分を雑音成分から分離するためにウェーブレット変換を,AEFデータ 処理へ適用した。630回の加算平均データを本来の誘発脳磁界信号として,それをもとに 作成した非定常フィルタにより,数回ごとの誘発信号成分を分離することができた.

“MEG Study on Effect of Attention and Non-attention in Sensory Cognitive Process”

本研究では注意側と反対側の反応を非注意反応として,体性感覚刺激における非注意側の SII反応の潜時,強度に着目することで,大脳皮質の活動を時空間的に捉え,非注意の効 果について,および刺激強度に依存して,注意・非注意の効果が変動することについて検 討した.MEG測定は健常者10人で行い,示指に電気刺激を与えた.脳磁界計測の結果, 活動強度比とダイポール活動強度の結果より非注意の効果は強刺激において注意の効果よ りは低いがSIIの活動が有意に増加することを捉えることができた.また,弱刺激におい て非注意の効果は擬似的に,より弱い刺激として認識することを示唆し,刺激強度に依存 して非注意の効果が変動することを捉えることができた.

「空間フィルタによるMEG解析」

MEG の高い時間分解能を活かすために時系列データを用いずに解析を行える可能性がある 空間フィルタによる方法が注目されている.しかし,従来の空間フィルタは深さ方向の推 定精度が著しく低く,実用に向けて改善が必要である. 本研究では空間フィルタによる MEG 解析の問題点を改善するためにKullback-Leibler 情報量を用いた新しい空間フィル タについて検討した.その結果最適化の方法や,分布}の与え方について工夫すると同時 に,より効率的な新しい評価関数についてもさらなる検討が必要であることが明らかとなっ た.

「MEG解析のための共分散行列の推定」

MEG(脳磁場)計測は高時間分解能をもつが,自発脳磁場により信号源推定の精度が劣化 する.この自発脳磁場は空間的に相関があるために,ノイズの共分散行列を用いることの 有効性が示されている.フィッシャー情報行列を用いて共分散行列を推定する手法を検討 した結果,空間的に相関のあるノイズに対しては十分な効果を発揮し,既存の標本共分散 行列のものより少ない試行回数で同等化またはそれ以上の良い結果を示すことが確認され た.

「集電接触力信号解析」

電車の高速化において,その動力となる電力を確実に供給することは重要であり,パンタ グラフ・トロリ線間の接触性能の評価は集電系の管理,保全に不可欠であると言える.接 触力が精度よく測定できるようになってきているが,測定されたデータは解析方法が確立 されていないため,電車線の保全に活用されていない.そこで本研究では接触力測定によ る架線状態の推測,診断の基礎研究として短時間フーリエ変換(STFT)と連続ウェーブレッ ト変換を用いた接触力信号解析による接触力変動の解析を行った.加算平均した接触力信 号のバイスペクトルから分離した径間周期の接触力周期信号を正常時の接触力変動とし, それをもとにアナライジングウェーブレットを作成し,接触力信号をウェーブレット変換 することで電車線診断が行える可能性を示唆する結果を得た.

「カクテルパーティ問題における基本周波数の分離抽出について」

複数の音声が混ざり合っている信号から全ての信号を分離して取り出そうというカクテル パーティ問題に対し,音声を最も重要なパラメータとされる基本周波数の観点から分離す ることを目標としている.Gabor関数を基本として構成される聴覚フィルタバンクからの 出力のヒルベルト変換により瞬時周波数が計算されることを確認した.

発表論文・学会発表など

論文

N.Matsuo, Y.Ohkita, Y.Tomita, S.Honda, K.Matsunaga, Estimation of an unexpected-overlooking error by means of the single eye fixation related potential analysis woth wavelet transform filter, International Jour. Psychophysiology, vol.40, pp.195-200,2001

G.Morita, Y.X.Tu, Y.Okajima, S.Honda, Y.Tomita, Estimation of the conduction velocity distribution of human sensory nerve fibers, Jour.Electromyogrphy and Kinesiology, vol.12,pp.37-43, 2002

口頭発表

工藤慎太郎、本多 敏、池田 充 「バイスペクトルを用いた集電接触力信号解析」 計測自動制御学会第18回センシングフォーラム

学位論文

博士論文(副査)

Shengli Wu “Moving Object Velocity Estimation and Extraction in the Time- Frequency Mixed Domain” (電気工学専攻)

川口 達也 「分散系二相流を構成する粒子の位置・粒径・速度の時空間特性同時計測法の開発」 (機械工学専攻)

Shuya Yoshioka “Control of Turbulent Seperated Flow over a Backward-facing Step by Periodic Forcing” (機械工学専攻)

修士論文

説田 崇 “MEG Study on Effect of Attention and Non-attention in Sensory Cognitive Process”

卒業論文

青山 敦 「VEF/AEFに対する感情価の効果に関する研究」
井上 剛 「独立成分解析を用いた口唇運動時のMEGデータ処理」
加藤 隆志 「電磁流量計を用いた3次元流速トモグラフィ」
鈴木 尋之 「ウェーブレット変換と独立成分解析によるMEG信号処理」
中野 裕介 「三次元ベクトル場におけるスプライン関数処理」

進路

NTTデータ
慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻  3名
東京医科歯科大学歯学部学士入学

助成

戦略的基礎研究推進事業「脳を創る」武田班「MEGによる人間の高次機能の解明」
鉄道総合技術研究所 「バイスペクトルを用いた集電線接触力信号解析」