2008年度 田中研究室

構成

准教授

田中敏幸

博士3年

米川雅士

博士2年

Kok Liang Tan

修士2年

秋山菜穂 磯亜由美 狩田裕史 小林亮介 近藤勝樹 鈴木彩子 野村昌史

修士1年

種村光訓 林昌輝 松下孝

学部

金子俊幸 鯉田怜 小山裕一郎 高橋明美 富永俊弼 中平徹 渡辺拓

 

進路

横河電機
ソニー
シャープ
NTTデータ
東京三菱UFJ銀行
野村総研
NTTコミュニケーションズ
株式会社ジェーシービー
KDDI

研究成果

(1)前立腺癌に対する重症度判別システム

本研究では,マハラノビスの欠点を補うSupport Vector Machine(以下SVMと略す)を新たに用いて特徴量の高次元化に対応することと,先行研究では難しいとされていた腺管の自動抽出を行うことで,総合的に癌の重症度診断の自動化行うことを目的とする.本研究で提案するアルゴリズムにより,腺管抽出が自動化され,総合的に前立腺癌の重症度を全自動で求めることができた.さらに,使用する特徴量が増えた場合に対応できる判別分析方法のSVM導入でシステムの応用度が広がった.そして,このシステムの精度は第一段階の判別で95.7%、第二段階の判別で77.5%と比較的高いものであり,システムの有用性を確認することができたと考えられる.

(2)呼気・吸気状態のCT画像比較による肺気腫解析アルゴリズム

本研究では肺野CT画像の解析を行い肺気腫の特徴を定量化し,医師の診断に客観的判断基準を提示することで医師の負担を軽減するとともに精度の高い診断の支援を行うことを目的とする.これまでに,血流による画素値の偏りを補正し,肺野およびLAAの抽出,先行研究において判別に有効と判断された特徴量を算出し,比較検討を行った。

(3)動画像処理による回転性めまいの解析

従来から,耳鼻科,脳神経外科などにおいて眼振と呼ばれる異常眼球運動の解析によるめまいの診断が行われている.眼振の解析方法としては,赤外線カメラによって眼球運動を撮影し,動画像処理を用いて解析する手法が現在主流になりつつある.しかし,動画像処理による解析には,まばたきなどのノイズに弱く,処理時間が長いという欠点がある.よって,本研究ではノイズに対してロバスト,かつ高速な動画像処理法により眼振を解析し,めまいの診断に応用することを目的とする.提案手法を用いることによって,まばたきなどのノイズに対してロバスト,かつ高速,高精度に瞳孔を特定できた.更に,回旋性眼振の回転角を算出し,解析精度の高さを定性・定量の両面から実証できた.

(4)カラーストライプ投影法を用いた高精度顔面三次元再構成法

本研究では,近年広く普及しているDLP プロジェクタとUSBカメラを用いた容易に構成できる装置により,人に対して低負荷な手法を用いて,高精度かつ高分解能な顔形状の三次元再構成を行うことを目指した.撮影方法や投影するストライプを改善することにより,安価な機器を用いて容易に構成できる装置により,1 秒程度の撮影時間と人に対して低負荷な顔形状の三次元再構成を行うことができた.また,提案手法によって,先行研究よりも分解能が2 倍である投影領域の768 分割にすることに成功した.さらに,投影角度による分解能のばらつきも抑えた.ボーリング球や平面を用いた精度評価では,提案手法を用いることによって,従来手法よりも誤差平均を約55~67%程度抑えることに成功した.また,マネキンを用いたるみ測定では,94.5%以上の精度を確認した.これらの結果から,本研究の目的である美容分野への適用可能性を示せた.

(5)多重解像度解析を用いた楽音信号の音高抽出

本研究では,従来の楽音解析に多重解像度解析を加えること,解析範囲を拡大すること,雑音・倍音・低周波ノイズ除去の方法を変えること,和音補正を行うことで未だ確立されていない正確な基音,和音抽出,更に楽譜描画ツール構築のための周波数解析向上を提案し,その評価を行った. この結果,本研究の提案手法は従来では認識できなかった短音や周波数帯を解析可能にし,倍音のみを除去することが可能となった.また,複数音存在する一般的な楽曲を解析し,楽譜通りに音高を楽譜に描画できたことから,知識・経験のない人間でも簡単に使えるツールを構築できたといえる.

(6)メジアンフィルタとウィナーフィルタによる混合雑音重畳画像からの原画像の復元

本研究では混合雑音によって画像が劣化する問題に対してそれぞれの雑音に効果的なフィルタを改良して組み合わせることで原画像を復元する手法を提案した.実験の結果,提案
手法はMandrill のような起伏の激しい領域が多く存在する画像に対して有効に働くことが分かった.今後は,画像の性質に依存しないロバストな画像復元アルゴリズムを構築するために研究を進めていく所存である.

(7)自然光下において色情報及び高性能画像マッチングを利用した静脈認証

本研究では赤外線を用いるかわりに色情報を用いて静脈を可視化し,かつ高精度な画像マッチングにより認証システムを構築することを目的とする.提案手法によって自然光下での静脈認証システムの構築及び高精度な画像マッチングを達成した.従来から課題であった画像マッチングにおいては回転角,拡大率ともに大幅な改善を行った.さらに,認証結果から色情報を用いて静脈強調することが有効であることが確認できた.

(8)X線CT検査における欠落データの推定アルゴリズム

本研究では,投影データの性質に矛盾が生じないように欠落した投影データを推定することにより、メタルアーチファクトを低減させるアルゴリズムを提案し,その有効性をシミュレーション実験によって実証した。

(9)搬送波を用いた高精度GPSの測位継続性向上に関する研究

本研究では,搬送波測位の一般利用を目指し,高精度測位を継続できる新たなアルゴリズムを提案した. 提案手法により,捕捉衛星数が十分な場合でも衛星数が制限されている場合でも,RTK以上の測位精度が確認できた.また,移動体測位においても提案手法による高精度測位の継続性を確認できた.現在の日本では国土地理院によりユーザ局の近傍に基準局が設置されているため,本研究の提案手法により搬送波利用測位の一般利用が可能であると言える.

(10)GPSを用いた3衛星下における測位アルゴリズム

本研究では,3機の衛星のみが観測される状況下において,受信機だけを用いて測位する方法を提案した.4つの未知数を計算するため,通常3機では測位を行うことができないが,連続したデータを用いることによって測位を可能とした.さらにL2帯搬送波位相を用いることで擬似距離のみを用いるよりも高精度な測位を実現した.実際の街中の衛星数を調査するために,日吉駅周辺において受信実験を行ったところ,通常測位に必要とされる4機以上の衛星が観測される割合は約61%であったが,3機以上では約77%となり,本手法により測位可能となる割合が向上することがわかる.本手法は受信機以外の機器を用いずに,基地局を利用する携帯電話の測位よりも高い測位精度が得られたため,街中や森林における有用な測位方法といえるだろう.

(11)GPS・GLONASS併用による測位精度改善に関する研究

本研究ではGPSとGLONASSを併用した測位を実現し,GLONASSの擬似距離を補正することで併用時の測位精度を向上させる方法を提案する.GLONASSの利用が必要となるのは主にGPSの可視衛星が不足する街中での測位であるため,固定点だけでなく動点での測位精度向上を目指す.GPSとGLONASSを併用することで,GPSのみの場合に比べて測位率が約20%程度上昇することを確認した.また併用した場合の精度に関しては、GLONASSの擬似距離を補正することにより、誤差を抑えることができた.

(12)少数衛星下でのGPS 測位システム

疑似距離予測により,衛星情報が少ない場合でも衛星情報を疑似的に増やし,測位可能な範囲を増やす事ができた.また,疑似距離予測と未知数を固定する2次元予測を併用すれば,さらに測位可能な範囲は増えるだろう.これは,特に街中での移動中など衛星情報が断続的に途切れるような場面で有効であると思われる.今回,高精度化よりは衛星可能にする事を目的としてやってきたが,実際の所,得られた誤差については衛星配置による所が大きい.衛星配置が悪いと疑似距離の誤差の影響が極端に大きくなるのである.軌道誤差をより低減させる提案を見つける事によって,今後さらなる高精度化の可能性を提案できるだろう.

(13)GPSを用いた二輪車走行軌跡の高精度測定法

現在,高速で移動する二輪車の走行軌跡を正確に測定する技術が要求されている.複雑な装置を用いず安価な測定を行うためにはGPS 受信機単独での測定が理想的である.しかし,GPS により二輪車を測位すると,アンテナの傾斜やコース付近の障害物によって頻繁に衛星からの信号を受信できなくなるため測定結果に悪影響が生じる.そこで,本研究ではGPS 受信機単独でこれらの悪影響を取り除き二輪車の走行軌跡を正確に測定することを可能にする新しいアルゴリズムの開発を目的とする.本研究ではGPS 信号が遮断される悪条件下でも正確に二輪車走行軌跡を測定できるアルゴリズムを開発した.提案手法によって二輪車測位特有の悪影響を軽減し,走行シミュレータなどに応用可能な精度を有した走行軌跡の測定に成功した.

(14)ドラム音の種類判別および自動採譜

本研究では楽音と非楽音の共存する音楽の自動採譜への第一段階として,ドラム音のみで構成された音楽の自動採譜ツールの構築を目指した.発音時間の周波数特性を抽出しファジィ推論を用いることでテンポ240,発音間隔にして0.25秒までならば発音時間を全て認識できた.テンポ240において種類の誤認識が見られるが,これはスネアドラムの特徴として膜の裏側にスナッピと呼ばれる金属が付随していて不安定な周波数特性を得たためだと考えられる.ドラムの自動採譜システムが実現すれば,他の打楽器にもこの方法を提案できると考える.

発表論文・学会発表・特許など

解説論文

  • 田中敏幸:画像解析による腫瘍の良性・悪性の判別,O plus E, Vol.30, No.6, pp.577-580,平成20年 6月
  • 田中敏幸:非破壊検査用X線CT画像の3次元再構成法,ふぇらむ,Vol.13, No.7, pp.483-486,平成20年 7月

国際会議

  • Yoshiki Kondo, Toshiyuki Tanaka: Automatic Music Scoring based on Wavelet Transform, SICE Annual Conference 2008, pp.1540-1543, 平成20年 8月
  • Mitsukuni Tanemura, Toshiyuki Tanaka, Kazuo Kikuchi: Measurement Methods and 3D Reconstruction Algorithms of X ray CT Inspection, SICE Annual Conference 2008, pp.1973-1976, 平成20年 8月
  • Ayumi Iso, Toshiyuki Tanaka: 3D Reconstruction of Facial Shape using Color Stripe Projection, SICE Annual Conference 2008, pp.3092-3095, 平成20年 8月
  • Yuji Karita, Toshiyuki Tanaka: Restoration of Original Image from Deteriorated Image by Probabilistic Image Model, SICE Annual Conference 2008, pp.3096-3100, 平成20年 8月
  • Ayako Suzuki, Toshiyuki Tanaka: Discriminant Method for Severity of Glandular Tumor by Support Vector MachineSICE Annual Conference 2008, pp.3101-3104, 平成20年 8月
  • Ryosuke Kobayashi, Toshiyuki Tanaka, Hidetoshi Nakamura, Toru Shirahata, Hiroaki Sugiura: Algorithm of Pulmonary Emphysema Analysis Using Comparing With Expiratory and Inspiratory State of CT Images, SICE Annual Conference 2008, pp.3105-3109,平成20年 8月
  • Tan Kok Liang, Toshiyuki Tanaka, Hidetoshi Nakamura, Toru Shirahata, Hiroaki Sugiura: An Automated 3D Emphysema Extraction Method using Lung CT, SICE Annual Conference 2008, pp.3110-3114, 平成20年 8月
  • Masashi Nomura, Toshiyuki Tanaka, Masashi Yonekawa: GPS Positioning Method under Condition of Only Three Acquired Satellites, SICE Annual Conference 2008, pp.3487-3490, 平成20年 8月
  • Masashi Yonekawa, Toshiyuki Tanaka: The Possibility and Practicality of A High Precision Positioning System using The Carrier, SICE Annual Conference 2008, pp.3491-3495, 平成20年 8月
  • Nao Akiyama, Toshiyuki Tanaka, Masashi Yonekawa: Recovery Method from Cycle Slip in GPS Positioning, SICE Annual Conference 2008, pp.3496-3499, 平成20年 8月
  • Masaki Hayashi, Toshiyuki Tanaka, Masashi Yonekawa: High Accuracy Positioning of Two-Wheeled Vehicle at High Speed teraveling using GPS, SICE Annual Conference 2008, pp.3500-3503, 平成20年 8月
  • Takashi Matsushita, Toshiyuki Tanaka, Masashi Yonekawa: Improvement accuracy in measurement of long baseline DGPS, SICE Annual Conference 2008, pp.3504-3508, 平成20年 8月
  • Kok Liang Tan, Toshiyuki Tanaka, Hidetoshi Nakamura, Toru Shirahata, Hiroaki Sugiura: An Automated Three-Dimensional Visualization and Classification of Emphysema using Neural Network, Forty-Second Asilomar Conference on Signals, Systems and Computers, TP8b3-11, 平成20年10月

口頭発表

  • 田中敏幸:パターン計測手法による腫瘍診断,SICE2008 Workshop, SICE Life Science Technology (Life, Health, Medical and Assist for Quality of Life), pp.7-10,平成20年 8月
  • 米川雅士,田中敏幸:搬送波を利用した新測位方法の提案,第25回センシングフォーラム資料,平成20年 9月
  • 野村昌史,米川雅士,田中敏幸:GPSを用いた3衛星下における測位アルゴリズム,第25回センシングフォーラム資料,平成20年 9月
  • 秋山菜穂,米川雅士,田中敏幸:街中でのGPS搬送波測位アルゴリズム,第25回センシングフォーラム資料,平成20年 9月
  • 狩田裕史,田中敏幸:確率的画像処理による劣化画像復元のための粒状性ノイズ抑制手法,第25回センシングフォーラム資料,平成20年 9月
  • 磯亜由美,田中敏幸:カラーストライプによる顔面の三次元再構成,第25回センシングフォーラム資料,平成20年 9月
  • 鈴木彩子,田中敏幸:腺癌に対する重症度判別システム,第25回センシングフォーラム資料,平成20年 9月
  • 近藤勝樹、田中敏幸:多重解像度解析を用いた楽音解析,第25回センシングフォーラム資料,平成20年 9月
  • 中平徹,田中敏幸:ドラム音の種類判別および自動採譜,第3回パーソナルコンピュータ利用技術学会全国大会,pp.113-116,平成20年11月
  • 林大雅,林佐千男,田中敏幸:太陽系の長構造と音楽情報モデル・数理モデルについて,第3回パーソナルコンピュータ利用技術学会全国大会,pp.153-156,平成20年11月
  • 高橋明美,田中敏幸:GPS・GLONASS併用による測位精度改善に関する研究,第3回パーソナルコンピュータ利用技術学会全国大会,pp.177-180,平成20年11月

受賞

  • Tan Kok Liang:国際論文発表奨励賞(慶応義塾)
  • 中平徹,田中敏幸:第3回 パーソナルコンピュータ利用技術学会全国大会 優秀研究発表賞,「ドラム音の種類判別および自動採譜」
  • 田中敏幸:第3回 パーソナルコンピュータ利用技術学会全国大会 優秀研究指導賞,「ドラム音の種類判別および自動採譜」「GPS・GLONASS併用による測位精度改善に関する研究」
  • 米川雅士:計測自動制御学会学術奨励賞(技術奨励賞)
  • 米川雅士:GCOE The 1st International Symposium Best Poster Award

Dept. Applied Physics and Physico-Informatics