1999年度 畑山研究室

構成

助教授
畑山 明聖
大学院
森下 卓俊 (D2)、植松 充良 (M2)、猿渡 栄一 (M2)、柴田 欣幸 (M2)、瀬川 秀洋 (M2)、 櫻林 徹 (M1)、
学部
秋山 尚樹 、石井 幸夫、大西 純、北出 祐基、 小松 直人 、真田 仁、平野 真理子 、山田 理正

研究概要

[ 磁場閉じ込め核融合プラズマに関する研究 ]

A.ダイバータ及びSOL(Scrape-off Layer)プラズマに関する研究

磁場閉じ込め核融合において、ダイバータは壁で発生する不純物の制御という重要な役割を担う。ダイバータプラズマ及び炉心プラズマ周辺を囲む低温SOLプラズマの特性が、高温の炉心プラズマ性能に大きな影響を及ぼす。また、工学的にもダイバータ板に集中する熱・粒子負荷の低減なしには、将来の核融合炉はあり得ない。

A.1 ダイバータ内外非対称性

多くのトカマク実験でダイバータの内外非対称性(トーラス内外のダイバータ板における温度、熱流などの非対称性)が観測されている。未だその物理的機構は明らかではない。また、熱・粒子負荷分散の観点から非対称性の制御が重要となる。そこで、トカマクSOL及びダイバータ領域を模擬する簡易空間5点モデルを開発した。このモデルは、従来の簡易2点モデルでは取り扱うことのできなかった非対称性を解析可能とした。これによりi) SOL電流に起因する熱電不安定性が非対称性の原因となり得ること、ii) 対称平衡が存在するためのしきい温度が存在することなどを明らかにした。 [論文(1)]。また、この空間5点簡易モデルをもとに、空間1.5次元モデルを開発し5点モデルの結果との比較を進めるとともに、不安定性の非線形時間発展及びその飽和機構に関する検討も進めた[論文(6)]。

A.2 非接触(Detachment)プラズマのモデリング

ダイバータ板への熱負荷軽減法として、非接触(Detachment)プラズマ概念が提案されている。プラズマと中性粒子間の相互作用を利用し、直接プラズマがダイバータ板に到達するのを妨げる。Detachment現象を理解するには、プラズマと中性ガスの両方についての総合的なモデリングが必要となる。今年度は、水素中性原子、分子の輸送について拡散近似と衝突確率法を組み合わせたハイブリッドモデルの開発を試みた。磁力線方向の中性粒子の輸送については、拡散近似を用いて記述する。一方、プラズマ密度及び温度の特性長が短い径方向の中性粒子の輸送については、運動論的効果をとりいれることできる衝突確率法を適用し、計算セル内での粒子数の保存が成り立つように両者を結合する。モデルの妥当性の検討のために、PISCES-A装置によるガスダイバータ実験の解析にモデルを適用した。原子密度及び分子密度についての実験結果を解釈するためには、原子の壁での再結合と分子としての再放出が重要な過程であることが示唆された[論文(7)]。

A.3 JT60-Uダイバータ実験の解析

A1,A.2の基礎研究とともに、日本原子力研究所の大型トカマク核融合実験装置JT-60Uダイバータ実験の解析も進めている。日本原子力研究所、マックスプランクプラズマ物理学研究所との共同研究により、”B2-Eirene” コードによる実験解析を進めた。シミュレーションにおいても、炉心プラズマが高密度になるとMARFE及びディタッチメントが観測された。さらにMARFE及びディタッチメントに伴って生じる、i)ダイバータ粒子負荷の非対称性の反転 、ii)イオン音速に達する高速流の発生について、その物理的機構を明らかにした[口頭発表(1)]。

B. 核融合炉の概念設計

最近、負磁気シア(RS)配位によるトカマク実験が行われ、プラズマの閉じ込め性能の向上が報告されている。RS配位は、炉心プラズマのコンパクトが期待でき、経済性の観点で魅力的な核融合炉概念を描くことができる。電力中央研究所等との共同研究によりRS配位トカマク炉の概念設計を行った[論文(6)]。

[ 負イオン源に関する研究 ]

A. 負イオン源0次元コードによる負イオン生成、消滅及び輸送過程の研究

我々はこれまで負イオン源についての0次元シミュレーションコードを開発し、負イオンの生成、消滅機構を研究してきた。現在、イオン源開発におけるトピックスとして、イオン源の大型化とセシウム添加によるビーム電流密度の増加の二点が挙げられる。以上の二点を解析するためには電子温度が重要なプラズマパラメータである。これまでは電子温度の実験データをシミュレーションに適用してきたが、新たに電子温度を解くことで具体的な評価が可能になった[論文(3), (8)]。

B. 負イオン生成分布に関するモンテカルロシミュレーション

負イオン源プラズマの理解及びそれに基づくイオン源設計の最適化にとって、負イオン生成点の空間分布の情報はきわめて重要である。イオン源の幾何形状の複雑さ、生成反応過程の複雑さ、等から、空間分布を解析するためのツールの開発は、現状、ほとんど行われていない。そこで、中性分子及び原子の輸送及び反応過程を、空間3次元で解析可能となるようなシミュレーションコードを開発した[論文(4)]。

C. 負イオン輸送現象のモンテカルロシミュレーション

負イオン源の性能向上にとって、生成された負イオンの引き出し確率の向上が望まれる。そこで、負イオンの種々の衝突・消滅過程を考慮した上で、軌道追跡を行う3Dモンテカルロシミュレーションコードを開発した[論文(4)、口頭発表(2)]。従来、この種のコードとしては、ヨーロッパで開発されたNIETZSCHEコードが知られている。我々のコードの特徴は、クーロン衝突過程における微小角散乱過程をより正確にモデル化した点にある。現在、このコードを用いて、Ecole Polytechniqueの負イオン源装置Camembert IIIの実験解析が進められており、共同研究に発展している。

[ 熱プラズマのモデリング ]

今年度より新たに、環境問題等へ応用されるRF熱プラズマのモデリングに着手した。その基盤作りとして、熱プラズマ中のエネルギー輸送、RF電磁場解析、異相混合系の数値計算法などについて基礎的考察をおこなっている。

発表論文・学会発表など

論文

  1. N. Hayashi, T. Takizuka, A. Hatayama and M. Ogasawara : “Numerical Analysis of Thermoelectric Instability in Tokamak Divertor” J. Nucl. Mater., 266-269 (1999) 526-531.
  2. M. Ogasawara, T. Morishita and A. Hatayama : “Relation between Vapor Cs and Absorbed Cs in H- Ion Source”, Rev. Sci. Instrum., 71 (2000) 877-879.
  3. T. Morishita, M. Ogasawara and A. Hatayama : “Numerical Simulation of Cesium Cooling Effects in H- Ion Source”, Rev. of Sci. Instrum. , 71 (2000) 880-882.
  4. Y. Uematsu, T. Morishita, A. Hatayama, T. akurabayashi and M. Ogasawara: “Monte-Calro Simulation of the Negative Ion Production in the Negative Hydrogen Ion Source”, Rev. of Sci. Instrum., 71 (2000) 883-886.
  5. K. Shibata, A. Hatayama, N. Hayashi and M. Ogasawara: “Numerical Simulation of Nonlinear Evolution of Thermoelectric Instability in Diverted Tokamaks”, Contrib. Plasma Phys., 40 (2000) 393-398.
  6. K. Okano, Y. Asaoka, T. Yoshida, K. Tomabechi, Y .Ogawa, N. Sekimura, R. Hiwatari, T. Yamamoto, T. Ishikawa, Y. Fukai, A. Hatayama, N. Inoue, A. Kohyama, K. Shinya, Y. Murakami, I. Senda, S. Ymasaki, S. Mori, J. Adachi, M. Takemoto: “Compact Reversed Shear Tokamak Reactor with a Super Heated Steam Cycle ” , Nucl. Fusion, 40 (2000) 635-646.
  7. A. Hatayama, Y. Fukai, Y. Kawakami and K. Yamada, “Modeling of Neutral Transport in Linear Divertor Plasma Using First Flight Collision Probability Method”, J. Nucl. Sci. Technol. 37 (2000) 368-379
  8. T. Morishita, M. Ogasawara and A. Hatayama: “Modeling of Electron Temperature in H- Ion Source”, Jpn J. Appl. Phys., 39 (2000) 2809-2815.
  9. 畑山明聖:”ダイバータのモデリング”、プラズマ・核融合学会誌, 76 (2000)56-59. (プラズマ・核融合学会誌小特集 ITER(国際熱核融合実験炉)物理R&Dの成果  3. 4節を分担執筆)

口頭発表

  • A. Hatayama, H. Segawa, R. Schneider, D. P. Coster, S. Sakurai, N. Hayashi and N. Asakura : “High Mach Flow Associated with X-point MARFE and Plasma Detachment “, JAERI International Meeting on Plasma Edge Issues for Existing Tokamaks and Next Step Devices, 1999年12月.
  • 櫻林徹、森下卓俊、畑山明聖、植松充良、小笠原正忠:タンデム型負イオン源における負イオン輸送シミュレーション、日本物理学会、春の分科会、2000年3月.

学位論文

博士論文(副査)

  • 菊池慶子:磁気抵抗効果型ヘッドのトラック密度向上に関する研究(計測工学専攻)

修士論文

  • 植松 充良: 水素負イオン源における中性粒子及び負イオン輸送に関するモンテカルロシミュレーション
  • 猿渡 栄一: JT-60UにおけるSOLプラズマの温度・密度分布の解析
  • 柴田 欣幸: ダイバータプラズマの非対称性とその制御に関する研究
  • 瀬川 秀洋:トカマクにおけるMARFE及びデタッチメント現象に関する研究

卒業論文

  • 秋山 尚樹:高周波誘導結合プラズマ装置内の電子温度の解析
  • 石井 幸夫:負イオン源内の振動励起分子に対する衝突緩和モデルとその適用限界
  • 大西 純: CIP法による圧縮性・非圧縮性流体の統一解法
  • 北出 祐基:負イオンを含むプラズマシース領域の解析と安定シース条件
  • 小松 直人:MARFEにおける粒子束の内外非対称性の反転
  • 真田 仁:ダイバータトカマク境界層を流れる電流に関する研究
  • 平野 真理子:トカマクダイバータプラズマの1次元シミュレーション
  • 山田 理正:高周波ループ電流により誘起されたプラズマ中の電磁界解析

■ 進路

三菱重工、九州電力、川崎重工、NHK、 東陽テクニカ 、慶應義塾大学大学院理工学研究科、 関西電力

■ その他

・早大、東京農工大と合同夏合宿(1999年8月) ・ マックスプランクプラズマ物理学研究所R.Schneider博士(1999年10月)、D.P.Coster 博士(2000  年1月)、エコールポリテクニーク M.Bacal博士(2000年3月)研究室訪問・共同研究 ・OB会(1999年12月)

■研究助成

電力中央研究所、日本原子力研究所


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics