1999年度 佐藤研究室

構成

助教授
佐藤徹哉
博士1年
小川智之
修士2年
篠原武尚,張 晟
修士1年
渡辺 裕
学部
樫原周一郎,小林久展,佐々木裕文,重宗正行,塚田雄一郎,長崎博文,林洋輔,吉田充高

研究成果

磁性微粒子含有リポソームによるドラッグデリバリーシステムの基礎開発

薬物を標的部位に必要量,必要な期間輸送するドラッグデリバリーシステム (DDS)の手段の一つとして,磁性微粒子含有キャリアを外部磁場により誘導する磁気的ターゲティング法が提案されている。本研究では,キャリアとしてマグネタイト含有リポソームを用い,磁気的ターゲティングには電磁石による局部的な磁場勾配によってキャリアを滞留させることを試みた。リポソームの磁場による滞留と細胞への取り込みを評価するために,血管を模擬した実験流路内で培養血管内皮細胞へのリポソームの取り込みを観察した。蛍光色素でラベルしたリポソームを灌流液に注入し,目標部位に局部的に磁場を印加し,内皮細胞によるリポソームの取り込みの変化をレー ザー顕微鏡を用いて,蛍光色素の輝度の分布を調べたところ, ▽H=2.0kG/cmの磁場 印加時で輝度が約2倍に増加した。また,磁場勾配が大きくなるほど広範囲に輝度の増加が見られた。

PdFe超微粒子の磁性に関する研究

4d遷移金属の一つであるPdは超微粒子サイズにおいてのみ強磁性を示す元素である。本研究ではPdFe合金を超微粒子化し,その磁性を検討する。PdFe超微粒子について磁気測定を行った結果,Pd99.6Fe0.4超微粒子の磁化は平均半径rが~90Å以下の試料においてサイズの減少に対して急激に増大することがわかった。また,Pd98.0Fe2.0超微粒子のキュリー温度は粒径の減少に伴い上昇し,平均半径rが~100Åの超微粒子試料ではバルクに対して70K程度上昇した。これらは超微粒子化に伴う母相Pdの磁気的な増大に起因するものと考えられる。Pd97.1Fe2.9超微粒子に対してPdのL2,L3吸収端近傍でのX線磁気円二色性の測定を行った結果,Pd一原子あたりの磁気モーメントの大きさはバルク,超微粒子についてそれぞれ0.17,0.11mB/atomと見積もられた。一方,磁気モーメントの軌道成分とス ピン成分の比/は,微粒子試料ではバルクに対して1.8倍程度増加することが わかった。この結果は,超微粒子化による磁気モーメントの軌道成分の増大を示唆するものである。

希薄磁性半導体Cda62Mn38Teを用いたスピングラスのaging効果の研究

スピングラスの発生機構を説明するドロップレットモデルでは温度,モーメント間 の相互作用の変化についてスピン状態を保存させることが示されている。この性質は 多値記憶と関連づけられ非常に興味深く,この温度変化等の影響は磁化緩和に表れてくる。本研究ではSQUID磁力計に光ファイバーを通して光照射を行い資料の温度を急激に変化させ,磁場中での温度変化による効果を調べた。その結果,磁場中ではスピングラスの長距離磁気相関が失われるというドロップレットモデルの予測を支持する 結果を得た。

NiMn/Cu/Ni薄膜の磁気特性と磁気抵抗効果

Arイオンビームスパッタ法によって作成したリエントランとスピングラス NiMn/Cu/Ni薄膜についてスピングラスの磁気特性に対して,強磁性の接合が及ぼす影響を,磁気,電気測定により調べた。まず各層厚をX線反射率法及びフーリエ解析により,従来より正確に決定した。次に磁気測定を行い,Cu:3nmより厚い領域の多層膜で,スピンバルブ膜的振る舞いをすること,Cuが厚い領域では,Ni.NiMn層による異方性磁気的抵抗効果が支配的にあらわれること,Niとの相互作用によりNiMnの磁化反転の過程が変化することが示唆された。

SQUIDを用いた交流磁化率測定装置

磁性体に交流磁界を与えた時,ある周波数以上で磁化に遅れが生じる。これは磁性体に固有の緩和時間が存在するためである。磁化の緩和は磁性体材料の評価の目安として用いられる。交流磁化率測定は微粒子の集合体のように様々な緩和時間を持つ磁性体の挙動を 調べるのに有用である。印加した磁場の周波数で測定可能な緩和時間の範囲が決まるため,磁性体の緩和時間の分布は磁化率の周波数依存性に現れる。また,長い緩和時間を持つ磁性体の挙動を調べるためには低周波の交流磁場を必要とするが交流磁化率測定は低周波ほど出力電圧が小さくなる。そこでSQUID(超伝導量子干渉計 [Superconducting Quantum Interference Devices])を用いることにより,測定可能な周波数範囲が広がり,広い緩和時間の分布をもつ磁性体をより正確に調べることが可能となる。このようなSQUIDを用いた交流磁化率測定装置の作成を進めてい る。

磁気記録媒体のためのBaフェライト微粒子累積膜の作成

記録方式は限界の見える長手磁気から垂直磁気へと確実に移行しつつある。垂直磁気記録の実現にBaフェライトは有望で,達成には微粒子を均一に積層する必要があ る。本研究では,反対電荷のポリマーに交互に基板を浸すだけで自発的吸着,自己組織化がなされ簡便に薄膜を作成できる電解質ポリマーとの交互吸着を応用してBaフェ ライト微粒子と電解質ポリマーとの交互吸着による累積を試みた。Baフェライトを電解質ポリマーと混合し,反対電荷のポリマーと交互吸着することで,Baフェライト微粒子の累積に成功した。

アモルファスCrFe薄膜の電気抵抗振動現象に関する研究

これまで液体窒素で冷却した基板上に蒸着を行うことにより作成したFe濃度7.6, 22, 26の非結晶CrFe薄膜において電気抵抗が低温で周期的に振動し,その振動数 が温度に依存することが見い出された。このような振動現象が金属薄膜において観測 された例はこれまで見ない。そこで本研究ではx=26付近の非結晶CrFe合金を作成し, その電気抵抗を測定し,振動周期におよぼす温度と磁化の影響を考える。現在,Crを buffer層として堆積させることにより均一なCr74Fe26合金薄膜作成が可能となり,今後は結晶構造解析,電気抵抗測定を行う。

発表論文・学会発表・特許申請など

論文

  • M. Fukase, Y. Tazuke, H. Mitamura, T. Goto, T. Sato, “Successive metamagnetic transitions in hexagonal La2Ni7“, Journal of Physical Society of Japan 68 (4) 1460-1461(1999)
  • T. Shinohara, T. Sato, T. Taniyama and I. Nakatani, “Size dependent magnetization of PdFe fine particles”, Journal of Magnetism and Magnetic Materials 196-197 94-95 (1999).
  • H. Kawai and T. Sato: “Magnetic response of Cd0.63Mn0.37Te under illumination: Dynamic behavior of spin glass with step-like heating and cooling”, Journal of Applied Physics 85 (10) 7310-7315 (1999).
  • T. Sato and K. Morita: “Magnetic phase diagram of itinerant-electron-type helical-spin-glass reentrant magnet Cr0.81Mn0.19Ge”, Journal of Physics : Condensed Matter 11 4231-4249 (1999).
  • T. Sato, M. Furusaka and M. Takeda: “Magnetization process of helical-spin-glass reentrant magnet Cr0.81Mn0.19Ge observed on various spatial scales”, Journal of Magnetism and Magnetic Materials 195 345 – 361 (1999)
  • T. Taniyama, I. Nakatani, T. Sato, T. Namikawa, and Y. Yamazaki: “Magnetization process of zigzag shaped Co wires”, IEEE Translation on Magnetism 35 (5) 3478-3480 (1999).

口頭発表

  • 小川智之,長崎博文,佐藤徹哉:「リエントラントスピングラスNiMn/Cu/Ni薄膜にお ける磁気異方性」,日本物理学会,関西大学,大阪
  • 長崎博文,小川智之,佐藤徹哉:「リエントラントスピングラスNiMnと強磁性Niを含 む3層膜に関する研究」,日本物理学会,関西大学,大阪
  • 小林久展,佐藤徹哉:「スピングラスのエイジングに対する磁場中温度サイクルの効 果」, 日本物理学会,関西大学,大阪
  • 篠原武尚,佐藤徹哉,谷山智康:「PdFe超微粒子のX線磁気円二色性」,日本物理学 会,関西大学,大阪
  • 重宗正行,篠原武尚,佐藤徹哉:「Pd97.3Fe2.7超微粒子の磁化の粒径依存性」,日 本物理学会,関西大学,大坂
  • 佐藤徹哉,Per Noprdblad:「リエントラントスピングラスNiMnの動的スケーリン グ」,日本物理学会,関西大学,大阪

学位論文

修士論文

  • 篠原武尚:PdFe超微粒子の内部磁気構造に関する研究

卒業論文

  • 小林久展:スピングラスのエイジングに対する磁場中温度サイクルの効果
  • 佐々木裕文:界面活性剤液面連続真空蒸着法により作成したAuFe超微粒子の評価と磁気測定
  • 重宗正行:Pd1-xFex(x=0.02)超微粒子の磁気的性質
  • 塚田雄一郎:磁性微粒子含有リポソームによるドラッグデリバリーシステムの基礎開発
  • 長崎博文:NiMn/Cu/Ni多層膜の磁気特性と磁気抵抗効果
  • 林洋輔:磁気記録媒体のためのBaフェライト微粒子累積の作成
  • 吉田充高:SQUIDを用いた交流磁化率測定装置

進路

博士課程進学(総合デザイン工学専攻), 修士課程進学(総合デザイン工学専攻)

研究助成

  • 科学研究費補助金基盤研究(c),「スピングラス/強磁性交換結合膜を用いたスピ ングラス型多値メモリ-の研究」
  • 泉科学技術振興財団助成金,「Pd超微粒子における強磁性発生機構に関する研究」
  • 関科学技術振興記念財団助成金,「パラジウム超微粒子の磁性」
  • 大学特別研究期間制度適用者特別研究費,「ランダム磁性体のダイナミックスに関す る研究」
  • 学事振興資金共同研究,「質量制御型交互吸着法を用いた多重磁気記録素子の構築」 (代表:白鳥世明専任講師)
  • 学事振興資金特A研究,「電子状態や磁気長距離秩序変化と連動したスピングラスの エントロピー情報の研究」(代表:安西修一郎教授)

Dept. Applied Physics and Physico-Informatics