2000年度 横井研究室

構成

助教授:
横井康平
博士1年:
米谷佳晃
修士2年:武元理矢
修士1年:松原裕樹
学部4年:小野瀬隆文,片山智之,杉原誠,本間耕平,樋口正憲

研究成果

a.ベンゼン結晶の高圧相の構造(米谷佳晃)

実験で観測されているの高圧でのベンゼン結晶の中には構造の不明確なものがある。 分子シミュレーションの結果、従来行われたシミュレーションでの予想結晶構造より もエネルギー的にもっと安定であるが、層欠陥を含んだ不規則構造が存在することを 発見した。その構造はX線回折の実験結果とも良く合う。

b.分子シミュレーションにおける結晶構造相転移の促進(米谷佳晃)

分子結晶の構造相転移シミュレーションは計算時間の面できつい研究テーマである。 それは、成りゆき任せでは異なる構造間のポテンシャル障壁をなかなか越えられない からである。その相転移を促進させるための方法として、シミュレーションセルの運 動の慣性を操作する方法を考案した。

c.分子集合体シミュレーションにおける分子内電荷分布の検討(武元理矢)

分子集合体においては分子内の電荷分布が孤立分子の場合と一般的には異なるはずで ある。そこで、孤立分子の場合と結晶内の分子の場合での静電ポテンシャルにフィッ トした電荷分布を求めたところ、両者には明らかな相違が現れた。しかし、それを用 いた分子動力学シミュレーションの結果の結晶構造には大きな相違が現れなかった。

d.βペリレン実験結晶構造の再検討(小野瀬隆文)

以前発表されているβペリレンの実験結晶構造においては、その構成分子の構造が孤 立分子に比較して大きく歪んでいて不自然である。分子シミュレーションの結果、X 線回折の実験結果の解析に誤りがあることを確信し、正しい結晶構造を予想した。

e.アセナフチレン結晶の比熱と構造相転移(杉原誠)

実験結果では、アセナフチレン結晶には低温において比熱が発散する箇所がある。分 子シミュレーションによりその比熱の発散の傾向を確認し、分子回転に起因する構造 相転移と関連づけようと試みた。

f.結晶構造再現性からみたポテンシャル関数型の検討(片山智之)

分子シミュレーションで用いられるファンデルワールス相互作用のポテンシャル関数 型を、結晶構造再現性の面で比較検討した。その結果、パラメータを個々に最適化す る限り、どの関数型を用いても大きな差はないことが分かった。問題はパラメータの 汎用化との両立である。

g.カーボンナノチューブへの水素吸着(本間耕平)

カーボンナノチューブの様々な応用の中に水素吸蔵物質としての研究がある。ファン デルワールス相互作用によるカーボンナノチューブ分子表面への物理吸着特性を様々 な分子配置,温度,圧力などで調べた.

h.高ひずみ分子の炭素原子ポテンシャルパラメータ(樋口正憲)

キュバン分子(C8H8)は立方体構造であり,通常のsp3炭素結合から大きくずれて いる.そのような電子分布の相違が原子のポテンシャルパラメータの及ぼす影響を, 結晶におけるパラメータ最適化を通して検討した.

i.分子モデルと分子のミクロな運動・分子集合体のマクロな運動との関連(横井 康平)

分子モデルには様々なレベルの近似があり,その違いに因り分子シミュレーション結 果には少なからず相違が現れる.求めたい性質に対する必要充分な分子近似レベルで シミュレーションすることがCPU時間節約の点で大切であるため,両者の関係を検討 した.

j.異方性ポテンシャル関数を用いたパラメータ汎用化(横井康平)

モデルポテンシャル法を用いた分子シミュレーション法の結果の信頼性はポテンシャ ルパラメータにある.その望まれる精密化と汎用化は相反するため適当な妥協が必要 であるが,ポテンシャル関数型を工夫し,分子としての異方性を取り入れることでそ の妥協点のレベルを上げることができた.

研究発表

  • 米谷佳晃、横井康平 ベンゼン高圧相の結晶構造予測 2000計算化学討論会 2O10,2000年6月  東京
  • 米谷佳晃、横井康平 ベンゼン高圧相の結晶構造予測 第55回日本物理学会年次大会 25pXA-5,2000年9月  新潟
  • 米谷佳晃、横井康平 結晶相転移の分子動力学法 第14回分子シミュレーション討論会 2P28,2000年1月  名古屋
  • 横井康平 異方性関数を用いたポテンシャルパラメータの汎用化 第14回分子シミュレーション討論会 101S,2000年1月  名古屋
  • Y. Yonetani and K. Yokoi, Promotion of crystal phase transitions by mass-of-cell control in molecular dynamics simulations: Phase transitions in benzene crystals, Molecular Simulation, Vol.26, No.4, 273-286 (2001).
  • Y. Yonetani and K. Yokoi, Solid structures of benzene at high pressures: Molecular dynamics study, Molecular Physics (掲載決定).

学位論文

博士論文(副査)

  • 小山紀久:第一原理計算によるミスフィット転位とヘテロエピタキシャル成長に関 する研究(物質科学専攻,主査:太田英二教授)
  • 萩田克美:高分子鎖の緩和の統計力学的研究(物理学専攻,主査:高野宏助教授)
  • 小峰啓史:実空間基底を用いた第一原理電子状態計算法の研究 (計測工学専攻,主査:椎木一夫教授)

修士論文

  • 武元理矢:結晶内静電場を再現する原子上点電荷を用いた分子動力学計算

学士論文

  • 小野瀬隆文:分子動力学法によるβペリレン実験結晶構造の再検討
  • 片山智之:ナフタレン結晶構造の再現性によるポテンシャル関数型の検討
  • 杉原誠:アセナフチレン結晶の構造相転移の分子シミュレーション解析
  • 本間耕平:水素吸蔵カプセルとしてのカーボンナノチューブ
  • 樋口正憲:キュバン分子結晶における特異なsp3炭素原子パラメータ

進路

三菱電機,東芝,ネスレ日本,慶応義塾大学大学院

研究助成

  • 慶応義塾先端科学技術研究助成金
  • 岡崎国立共同研究機構計算科学研究センター施設利用

Dept. Applied Physics and Physico-Informatics