2000年度 武藤研究室

構成

教授
武藤準一郎
修士
神山和彦、黒川敦雄、宮崎然、木村隼人
学部
小島健介、鈴木美緒、 真垣葉子、馬渡修、山下哲郎、山根慎二、宮本宗司

 

研究成果

当研究室では、光物性の立場から主に太陽電池の素材を中心に研究を展開している。 またより信頼のおける評価を得るためのホール効果等の自動装置系の構築もおこなっている。

「電着CdSe薄膜の光電特性」

II-VI族化合物半導体CdSeは直接遷移型のエネルギー・バンド構造をもち、基礎吸収端よりも短波長域での光吸収係数も高く、すでに光電導せるとして用いられ、湿式 陽電池としても試みられている。またCdSeを薄膜化することにより、薄膜型の固体太陽電池としてのも期待されている。電着法は薄膜作製技術の一つであり、装置系が簡単でかつ低コストで作製出来る利点がある。

本研究では電着法でCdSe薄膜をITO(In-Sn-O)ガラス基板上に室温で成長させ、窒素中30分、300℃で熱処理を行い、その構造的、電気的、光学的、光電的特性を調べている。ここに膜厚は電着時間でコントロールし、参考の為蒸着CdSeの性質も調べている。その結果

(1) 電着膜は蒸着膜同様、六方晶を示した。

(2)光吸収より求めたバンドギャッ プの値は1.7eVであり、膜は一様で基礎吸収端よりも長波長で膜厚方向の光干渉による周期的吸収が観測された。

(3)電解液中のSeO2濃度を変化させることによりこの膜の電気抵抗率を103~107Ω・cmの範囲で制御できた。また電気抵抗率の活性化エネルギーは空気中で0.3、真空中で0.15eVであり、真空中の値はSeの空格子点のそれと一致した。

(4) 光伝導の感度は蒸着膜CdSeより劣っており、その最高値は700nmで膜が厚くなるに従 い表面再結合の割り合いが減少することが蒸着膜との比較より確認された。これらの 結果は今後薄膜CdSeデバイス作製に対して重要な指針を与えるものである。

「三元混晶半導体CdSexTe(1-x)電着膜の作製と評価」

CdSexTe(1-x)は直接遷移型のエネルギーバンド構造をもち、基礎吸収端より長波長での光吸収が大きく、また組成比xを変化させることでバンドギャップ、電気伝導度等種々の特性を変化させうるので光センサーや太陽電池への応用が期待される。当研究室ではガラス基板上に、CdSexTe(1-x)蒸着薄膜を作製しその組成、構造、光学的、電気的性質を調べた。その結果従来の報告どおりx=0.5付近でバンドギャップが最小値をとるものの、出来た膜は従来の結果と異なりTeがが少ない領域では伝導型がn 型であるが、Teが多くなるとp型になることを見い出した。

「室温パルス電着法によるCdS博膜の作製と評価」

CdSは太陽電池の窓材としても用いられる代表的な光電材料である。我々は従来高温でしか作られていなかった簡便な膜作製法であるパルス電着による良質のCdS薄膜作製を室温でより簡単に作製する方法を確立した。最適電着条件は電解液組 成CdSO4:0.001M、Na2S2O3:0.2M、pH=2でアノード電位0.5V (vs SCE)、カソード電 位0.9V (vs SCE) duty比0.33、1サイクルの時間=3Sのときであり、出来た膜は閃亜鉛鉱構造で一定電位下で電着した時認められたS単体の存在は認められず、熱処理により膜表面が非常に滑らかで一様であることを確認した。この結果を基にしてヘテロ接合太陽電池の試作を試みている。

「グレッチェルセルに関する研究」

光電極が直径数十nmのナノクリスタル半導体堆積構造で色素がその表面に吸着している高効率な色素増感型光化学太陽電池(グレッチェル型光電池)について、電解溶液の太陽光吸収による効率低下を推定した。その結果、Ferberらの用いたモデルによりヨウ素を含む電解液で、裏面電極での光反射を考慮すると生成電子密度が約2%程度減少することを見い出した。さらに電解液濃度のゲインに対する影響、ナノクリスタル自身の光吸収によるゲインの低下についても定量的な解析をおこなった。 尚、このグレッチェル型セルの電極における光電気輸送過程には不明の点も多い。当研究室では、さらにこの電極の輸送過程の解析をシミュレーションにより解析中である。

「太陽電池モジュールの特性」

実際に太陽電池発電をおこなうには、個々のPVセルの発電能力が限られているため、 これらセルを直並列に接続、太陽電池アレーを構成、所望の電圧、電流、電力を得ることが必須である。ところでこの太陽電池アレー木の葉、雲等何らかの理由により一部分発電能力が落ちた場合アレーの特性がどう変化するかは実用上興味のあるところである。本研究では種々の直並列接合太陽電池アレーについて、一部分影になった場合どのような特性変化があるか特に、電力の観点からシミュレーションをおこなっている。今後より現実の太陽電池アレーをモデルに解析を進めていく予定である。

■ 発表論文・学会発表

  • N. Himei and J. Muto, “Preparation and properties of electrodeposited Hg1-xCdxS films”, J. Mater. Sci. Mater. Electron., 11 (2000) 145.
  • 前田靖裕、武藤 準一郎;「In及びSeを含む電解水溶液からのIn2Se3電着膜の作製」材料科学 37 (2000) 200. (Y.Maeda and J.Muto; Electrodeposition of In2Se3 Films from Aqueous Electrolyte Containing both In and Se,J.Material Sci.Soc.Japan 37(2000)200.).
  • 黒川敦雄、武藤準一郎;「蒸着CdSe膜の作製及び評価(1)」 (日本材料科学会講演会2000.5)[A.Kurokawa and J.Muto; Fabrication and characterization of vacuum deposited CdSe films(1)].
  • 黒川敦雄、武藤準一郎; 「真空蒸着CdSe膜の作製及び評価(2)」(第48回応用物理学会講演会2001.3) .[A.Kurokawa and J.Muto; Fabrication and characterization of vacuum deposited CdSe films(2) (48th Annual meeting of Japan Soc.Appl.Phys. 2001.3)].
  • 宮崎然、山根慎治、武藤準一郎;”蒸着CdSexTe(1-x)薄膜の作製及び評価 (第48回応用物理学会講演会2001.3)[Z.Miyazaki, S.Yamane and J.Muto; Fabrication and characterization of vacuum deposited CdSexTe(1-x) films (48th Annual meeting of Japan Soc.Appl.Phys. 2001.3)].

学位論文

修士論文

  • 神山和彦:電着CdSe薄膜の光電特性 (Das optische und elektrische Charakteristikum der Elektrodepositions CdSe Filme)

卒業論文

  • 小島健介:ホール効果測定装置系の構築(Construction of a Hall measurement system)
  • 鈴木美緒:グレッチェル型太陽電池におけるゲインの解析(A gain analysis of Grezel type solar cell)
  • 真垣葉子:室温パルス電着法によるCdS薄膜の作製と評価(Fabrication and properties of pulse-plating electrodeposition of CdS thin films at room temoerature)
  • 馬渡 修:太陽電池アレイの特性解析の特性に関する研究(An analytical study on the characteristics of solar cell arrays)
  • 山下哲郎:太陽電池モジュールの特性~直列および並列(アレイ)接続太陽電池の解 析~(Operating characteristic of PV solar cell modules)
  • 山根慎二:真空蒸着CdSexTe(1-x)薄膜の作製および評価(Fabrication and characterization of vacuum deposited CdSexTe(1-x) films)
  • 宮本宗司:室温電着CdSe薄膜の性質 (Properties of CdSe thin films electrodeposited at room temperature)

進路

慶応義塾大学理工学研究科,自衛隊,専門学校


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics