2000年度 富田研究室

構成

教授
富田 豊
兼担助教授
岡島康友(医学部リハビリテーション医学教室)
共同研究員
細野直恒(沖電気)
博士
衛藤憲人(D2),大西洋一(D2)
修士課程
加茂野有徳(M1),小高有希(M1),武田湖太郎(M1)
学部
牛場潤一(B4),岡崎俊太郎(B4),松岡洋平(B4),工藤大輔(B4)

研究成果概

脊髄レベルでの神経ネットワークの解析

脳卒中麻痺肢の運動機能改善を目的に治療的電気刺激(Therapeutic Electrical Stimulation: TES)が臨床において使用されている.TESは麻痺神経筋に対して電気刺激を与える手 法で,随意運動の向上および痙縮などの不随意運動の抑制効果があることが報告されているが,そのメカニズムについては未だに解明されていない.筋紡錘からのIa抑制,腱器官による伸長反射,拮抗筋からの相反抑制,大脳皮質からのIa抑制介在ニューロンの作用など明らかにされなければならない作用が何重にも折り重なった閉ループ系であり,神経生理学的・ 臨床的に解明した.

治療的および機能的電気刺激

近年交通事故による脊髄損傷,脳出血・脳梗塞による脳卒中などが原因で起こる中枢神経麻痺による障害が増加している.これらの障害では末梢神経や筋肉が正常である場合が多 い.そこで,末梢神経や筋肉に電気刺激を与えて,歩行を再建する試みがなされているが,従来は大掛かりな装置と専従のオペレータを必要とした.また,あらかじめプログラムされ た刺激しかできなかったので,長時間にわたって筋肉に電気刺激を与えた時の筋疲労により,同じ強度の電気刺激を与えても筋肉の収縮力が変わってきてしまった場合には対応ができ なかった.
そこで,今回われわれは筋疲労をモニターしながら電気刺激を与えることのできる小型で使用が容易な電気刺激装置を試作することにした.試作に先立って,M波の振幅は筋疲労の 指標となること,歩行遊脚時に下腿が前傾することを確認した.また電気刺激回路について計算機シミュレーションを試行した.その結果を考慮して,M波を観測するオブザーバをも つ小型の刺激装置を試作した.さらに,装置をスポーツ用膝サポータに収まる大きさまで小型化し,患者のズボンやスカートに隠すことができるようにした.装置は従来必要であった の商用電力を必要とせず,9Vの乾電池(006P型)1つで十分な電気刺激ができるようになった.
サポータに取り付けた本装置を患者の膝に装着し,電極を腓骨神経直上の皮膚上と前脛骨筋の筋腹直上の皮膚に貼った.また傾斜計をサポータに取り付け,鉛直より前傾した時に遊 脚期と判断し,前脛骨筋に刺激を与えて,足関節を背屈させた.
上肢が正常ならば,患者自身で本装置を装着でき,爪先を接地せずに歩行することができるようになった.

発表論文・学会発表など

原著論文

  • 斎藤卓哉,富田豊,”ファジィ理論を用いた心拍変動による覚醒水準変化の推定”,人間工学,36, 91-93(2000)
  • 岡島康友,富田豊,”障害者支援機器とリハビリテーション”,からだの科学,213, 68-74(2000)
  • 村岡慶裕,富田豊,他,”治療的電気刺激による脳卒中患者の足関節筋群における2シナプスIa相反抑制の変化,リハビリテーション医学,37, 453-458(2000)
  • 田沼明,富田豊,他,”インピーダンス変化を利用した入力装置がコミュニケーション障害に有用であったLocked-in症候群の1症例”,リハビリテーション医学37,533-537(2000)
  • Y.Okajima, Y.Tomita, et al,”Motor unit sound in needle electromyography: Assessing normal and neuropathic units, Muscle and Nerve, 1076-1083(2000)
  • 細野直恒,井上裕光,富田豊,”工業教育を受けた大学生と新入社員の官能評価による就職観”,工業教育,48, 25-30(2000)
  • 有田元英,富田豊,他,”同心円型能動電極の電気生理学的検査への応用”,リハビリテーション医学, 38, 38-41(2001)
  • 高橋修,富田豊,他,”運動神経伝導検査における能動電極と塩化銀電極の比較”,医学検査,49, 1134-1139(2000)
  • 細野直恒,井上裕光,富田豊,”携帯情報端末の仕様決定のための官能検査”,ヒューマンインターフェース,3, 9-14(2001)
  • N.Matsuo, Y.Tomita, et al,”Estimation of an unexpected-overlooking error by means of the single eye fixation related potential analysis with wavelet transform filter”, International Journal of Psychophysiology, 40 195-200(2001)

学位論文

博士論文(主査)

  • Yoshihiro Muraoka:Development of a new electrical stimulation system and its therapeutic application to spastic paralysis

卒業論文

  • 牛場潤一:上肢筋群から上腕二頭筋への投射
  • 岡崎俊太郎:モルモット聴覚皮質層構造の機能解析
  • 古和田卓:他者操作型電気刺激装置による歩行再建

進路

慶應義塾大学大学院理工学研究科

助成

  • 文部省科学研究費補助金:機能的電気刺激による対麻痺患者の歩行再建
  • 慶応義塾学事振興資金:機能的電気刺激による脳卒中患者の機能再建
  • 慶応工学会:Estimation of Distribution of Conduction Velocity
  • 武田科学振興財団:脊髄レベルにおける運動制御メカニズムの検討
  • 沖電気:デザインのための官能検査 Online Medical Support System:問診システムの構築

Dept. Applied Physics and Physico-Informatics