2000年度 椎木研究室

構成

教 授
椎木一夫
博士課程3年
小峰啓史
修士課程2年
佐野隆美、長嶺信
修士課程1年 
石井望、海住英生、兼吉亮成、山内貴将
学 部 4年
五十嵐雅明、木元貴士、野村亜衣、両角武、堀寛修、藤田滋雄、安田 美穂

研究成果

<実空間電子状態計算法の開発>

近年、微細加工や真空利用などの技術の進歩にはめざましいものがあり、従来は困難であった、ナノスケールオーダーで構造を制御した、人工物質の創製が可能になりつつある。ナノスケールの系では、表面や界面の性質が色濃く反映される結果、新しい機能を持った新物質が得られる、可能性がある。たとえば、情報ストレージの分野 では、高感度な磁気センシング材料が期待できる。本研究では、このような系の性質を理解し、目的とする新機能物質を設計することを最終目標としている。
従来、バルク物質に対する物性の理解および、物質設計を目的としてバンド理論に基づく電子状態の計算が行われてきた。しかし、これらの計算は結晶の周期性を仮定しており、ナノスケールの系には適用できない。そこで、我々は新たに周期性を仮定せず、実空間で電子状態を計算する方法を開発し、とくに遷移金属に適用することを 試みた。
我々が開発した方法はEmbedded Atomic Sphere 法に基づくものである。これは、 ポテンシャルの変化が大きい原子核の近傍は原子球で置き換えて波動関数を球面波で展開し、原子球の外側は差分近似して実空間でシュレディンガー方程式を解く方法であるが、実際に電子状態が計算された例はない。我々は従来のEAS法の困難を取り除くため、まず原子球内部については、エネルギー線形化を行い、波動関数の求解を可能にした。つぎに、波動関数の解法について、最急降下法により汎関数を最適化する手法と部分空間で対角化する手法を組み合わせる方法を提案し、従来の行列を対角化する方法に対して大幅に演算量を低減させた。さらに、原子球を埋め込んだ系についてポテンシャルを精度よく計算できるようにして、自己無撞着な計算を可能にした。
開発した方法を、厳密解が分かっている水素原子や、水素分子、銅の結晶などに適用し、正しい結果を与えることを確認した。
以上の結果は、小峰啓史君の博士学位論文としてまとめられている。このように、 実空間で電子状態を計算する新しい方法を提案できたので、今後は計算時間の短縮を図るとともに、モデル化の検討を進め、実際に新機能物質の設計を行う予定である。

発表論文・学会発表・特許申請など

<原著論文>

  • Self-Consistent Embedded Atomic Sphere Method for Calculating Electronic Structure of Non-Periodic Systems Progress of Theoretical Physics Supplement 138 (2000) 170-173 Takashi Komine and Kazuo Shiiki
  • Analysis of Magnetization State of Recording Head Tip with Narrow Track Jpn. J. Appl. Phys. 39 Part1, No.7A (2000) 3957-3960 Yusuke Shimizu and Kazuo Shiiki
  • First principle band calculation of ruthenium for various phases Journal of Magetism and Magnetic Materials 220 (2000) 277-284 Shoichi Watanabe, Takashi Komine, Tadashi Kai and Kazuo Shiiki
  • Stability of transverse and longitudinal bit in patterned media Journal of Magetism and Magnetic Materials 2xx (2000) – Kazuo Shiiki, Masato Furusawa and Eijiro Atarashi
  • Magnetotransport and spin configurations in patterned ferromagnetic wires Journal of Magetism and Magnetic Materials 2xx (2000) – Tomoyasu Taniyama, Yohtaro Yamaguchi, Isao Nakatani, Taro Yakabe, Kazuo Shiiki and Ai Nomura
  • Magnetoresistance Effect of Thin Films Made of Single Graphite Crystals Tanso 195 (2000) 410-413 Yoshiko Ohashi, Tatsuya Hironaka, Toshiharu Kubo and Kazuo Shiiki

<国際学会>

  • Study of spin tunneling magnetoresistive effect by first principles band calculation Electronic structure and magnetism in complex materials 2000 (Washington, USA) Hideo Kaijyu and Kazuo Shiiki
  • Stability of transverse and longitudinal bit in patterned media International conference on magnetism 2000 Recife, Brazil (2000) August 6-11 2R-12 Kazuo Shiiki, Masato Furusawa and Eijiro Atarashi
  • Magnetotransport and spin configurations in patterned ferromagnetic wires International conference on magnetism 2000, Recife, Brazil (2000) August 6-11 2U-31 Tomoyasu Taniyama, Yohtaro Yamaguchi, Isao Nakatani, Taro Yakabe, Kazuo Shiiki and Ai Nomura
  • Study of overwritten magnetization on the off-track position 8th Joint MMM-Intermag Conference, SanAntonio, Texas (2001) January 7-11 FR-05 Ai Nomura, Kei Iijima, Yukio Haseba and Kazuo Shiiki

<国内学会、研究会>

  • 超高密度磁気記録用ヘッドの研究 ストレージリサーチ・コンソシアム第9回研究会(2000年5月) 椎木一夫
  • Co-CoO 薄膜の磁化特性 日本物理学会年会2000年秋の分科会 24pPSB-1 山内貴将
  • Embedded Atomic Sphere 法による遷移金属薄膜の電子状態計算 日本物理学会年会2000年秋の分科会 23pPSA-4 小峰啓史、石井望、兼吉亮成、五十嵐雅明、椎木一夫
  • 第一原理バンド計算によるNi薄膜の膜厚依存性 日本物理学会年会2000年秋の分科会 24pPSB-3 兼吉亮成、五十嵐雅明、小峰啓史、椎木一夫
  • 第一原理バンド計算によるスピントンネル磁気抵抗効果に関する研究 日本物理学会年会2000年秋の分科会 24pPSB-4 海住英生、 小峰啓史、椎木一夫
  • オーバーライト時のオフトラックの記録磁化状態評価 第24回日本応用磁気学会学術講演会 15aA-10 野村亜衣、飯島桂、長谷場幸雄、椎木一夫
  • 実波形を用いた信号処理シミュレーション 第24回日本応用磁気学会学術講演会 15aA-12 佐野隆美、椎木一夫
  • Co-CoO スパッタ膜の磁気特性 日本物理学会第56回年次大会 27aPS-7 山内貴将、椎木一夫
  • 強磁性トンネル接合における絶縁層が及ぼす影響 日本物理学会第56回年次大会 27aPS-14 藤田滋雄、両角武、海住英夫、椎木一夫
  • Co/Al2O3/Co/NiO トンネル素子における高周波インピーダンス特性 日本物理学会第56回年次大会 27aPS-15 両角武、藤田滋雄、海住英夫、椎木一夫
  • スピントンネル素子における高周波インピーダンス特性 日本物理学会第56回年次大会 29pYB-4 海住英夫、藤田滋雄、両角武、椎木一夫

学位論文

<博士論文>

  • 小峰啓史 「実空間基底による第一原理電子状態計算法の研究」
    主査:椎木一夫、副査:安西修一郎、太田英二、横井康平、能勢修一
  • 中本一広 「高記録密度磁気ディスク装置用記録再生ヘッドの研究」
    主査:椎木一夫、副査:安西修一郎、本多敏、宮島英紀
  • 森下卓俊 「水素負イオン源における負イオン生成に関する研究」
    主査:畑山明聖、副査:真壁利明、中村義春、椎木一夫、小笠原正忠

<修士論文>

  • 佐野隆美 「磁気記録再生方式に対する信号処理方式の研究」

<卒業研究>

  • 五十嵐雅明「非球対称ポテンシャルに対するシュレディンガー方程式の解法」
  • 木元貴士 「媒体磁化状態からの漏洩磁界解析」
  • 野村亜衣 「オフトラック・オーバーライトの記録磁化状態解析」
  • 藤田滋雄 「トンネル磁気抵抗効果への絶縁層の影響」
  • 堀 寛修 「高周波記録電流に対するマイクロマグネティクス」
  • 両角 武 「反強磁性体 NiO の TMR 効果への影響とTMR 素子の高周波インピーダンス特性」
  • 安田美穂 「クロストーク信号に対する PRML 処理の効果」

進路

慶応義塾大学大学院理工学研究科,イオン工学研究所,松下通信工業,アジレントテクノロジー,ドイツ証券


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics