構成

専任講師
内山孝憲
修士
木村竜司,田中健太郎
学部
青木純一,齋藤基記,篠崎宏州,高山慎一郎,西川龍朗,福與千鶴

研究成果

筋の柔らかさの定量化

 疲労による凝りや運動障害によって筋が硬くなっている状態,あるいはそれらの治療の効果を,定量的に評価するために,触診を模倣する評価方法を提案した.圧子をロボットアームによって上腕に押し込み,押し込み量-反力関係を計測した.この関係を,非線形フォークトモデルおよび線形4要素モデルで近似することを試みた.球状圧子で計測する場合には,非線形フォークトモデルで応答を近似することができた.しかし,線形4要素モデルでは応答を近似することができなかった.非線形フォークトモデルでは,弾性係数を押し込み量の2次関数,粘性係数を3次関数と仮定するモデルを用いた.弾性係数は押し込み速度によって変化することはなかったが,粘性係数はゆっくり押し込むときに大きく,速く押し込むときに小さい性質を示した.

痙性の定量評価(ステップ応答)

 脳血管障害によって麻痺している(神経・筋系の制御システムの一部が正常に機能しなくなっている)上肢の肘関節まわりの粘弾性を,スッテプ応答法によって計測するシステムを開発した.筋骨格系の構造および粘弾性の推定の際に筋活動を考慮することにより,健常者はもちろん,麻痺者の麻痺のレベルに依存しないで,応答をモデル化することができた.多数の被験者について計測を行い,モデルに用いるパラメータの数について評価した.筋活動を考慮するモデルを用いる必要があること,また筋活動を考慮しないモデルを用いると,麻痺のレベルに依存して,モデルによる適合が変化することを示した.

痙性の定量評価(等速度伸展)

 上肢の肘関節まわりの粘弾性を,肘関節を等速度で伸展する際のトルクと筋電図を計測するシステムを開発した.ステップ応法による評価と同様のモデルを用いることにより,健常者および麻痺者応答をモデル化することができた.健常者では,伸展速度を速くしても観測されるトルクに大きな変化が見られないが,麻痺者では速度の増加とともにトルクが増加した.このことは臨床的知見に一致している.

家庭用ビデオカメラによる歩行計測システム

 家庭用ビデオカメラ2台を用いて,麻痺者の歩行を計測するシステムを構築し,性能を評価した.カメラに対する方向によって異なるが,20mm以下の誤差で位置を計測することができた.この値は,市販の計測システムの2から5倍程度の大きさである.また,麻痺者の歩行計測に適用した場合には,関節角度のずれとして3度以下の違いが認められた.

閾値以下電気刺激と視覚フィードバックを利用するリハビリテーション支援システム

 小指外転筋を対象にして,尺骨神経に筋収縮を発生しない弱い電気刺激を加え,筋電図を計測し,視覚にフィードバックするシステムを開発した.電気刺激により,麻痺している筋を動かすためのこつを掴むためのシステムである.本年度は,計測上の問題点を明らかにするために,健常者を対象にして計測時間および再現性のある結果を得るための条件について検討した.

ヒトの指を模擬するセンサの把持力制御システムの開発

 ヒトの指を模擬するセンサでは,多数の歪ゲージによってセンサ内に発生するせん断ひずみを計測している.従来,歪みゲージの数に対応する歪みアンプが必要であった.本研究では,ひずみ検出回路と1チップマイクロプロセッサを用いる計測システムを構築した.本システムによって計測されたひずみ分布に関しては,有限要素解析によって得られているものと一致するものが得られた.また,センサにクリープ現象が観測されることを示した.

発表論文・学会発表・特許申請など

論文

  • 内山孝憲,赤澤堅造:「運動単位の活動様式を模擬する筋張力制御のためのニューラルネットワークモデルの構築」,バイオメカニズム 15,143-152 (2000).
  • 奥野竜平,赤澤堅造,内山孝憲:「オンオフ型およびバイオミメティック型筋電義手の3D-CGシミュレータの開発」,バイオメカニズム15,165-172 (2000).

国際会議

  • T. Uchiyama and K. Akazawa: ‘Neural Network Model for Muscle Control Base on the Size Principle and Recurrent Inhivition of Renshaw Cells’, Proc. 1st Inter. Conf. on Atrificial Neural Networks in Medicine and Biology (2000).
  • T. Uchiyama, R. Kimura and M. Murayama: ‘Elastic- and Viscous-like Property of the Upper Arm Estimated by the Pushing Method’, Proc. 22nd Ann. Conf. of IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (2000).

口頭発表

  • 内山孝憲,木村竜司,村山光義:「押し込み反力計測によるヒト上腕の硬さ評価」,第39回日本エム・イー学会大会 (2000).
  • 木村竜司,内山孝憲,村山光義:「押し込み反力計測による上腕の粘弾性評価」,第21回バイオメカニズム学術講演会 (2000).
  • 福與千鶴,内田竜生,内山孝憲:「片麻痺患者における上肢痙性の定量評価」,第21回バイオメカニズム学術講演会 (2000).

学位論文

卒業論文

  • 青木純一:曲面状弾性フィンガ型センサによる把持力制御システムの開発 -歪み分布計測システムの高速化に関する基礎的検討-
  • 斎藤基記:等速運動による片麻痺患者における上肢痙性の定量的評価法
  • 篠崎宏州:片麻痺患者の下肢関節角度計測のための簡易型解析システムの開発
  • 高山慎一郎:閾値以下電気刺激と視覚フィードバックを用いたリハビリテーション支援システムの開発  -小指外転筋への適用によるシステムの評価-
  • 西川龍朗:押し込み反力計測によるヒト上腕の硬さ評価 -非線形フォークトモデルと4要素線形モデルによる近似-
  • 福與千鶴:弾性特性に着目した片麻痺者における上肢痙性の定量的評価

進路

慶応義塾大学大学院理工学研究科,東京工業大大学大学院,日本総研,フジシステム

研究助成

  • 科学技術研究費「ヒトの運動制御における粘弾性調節機構の解明のための計測システムの開発」