2000年度 池崎研究室

構成

教授:
池崎和男
大学院:
中山文夫、辛島将之、桑原論次、橋本竜憲
学部:
石川武人、石川哲也、鈴木健、松田雄二

研究成果

高分子粉体粒子界面分子鎖拡のTSCによる研究

粉体粒子の凝集は,粉体を扱う各種産業で種々の障害を引き起こす.静電粉体塗装工業においてもブロッキングと呼ばれる塗料粉体粒子の凝集が良質な塗膜形成の障害になる.塗料粉体粒子のように,粒子基剤が高分子である場合,接触粒子界面の状態は単に両粒子が接触しただけの状態と,両粒子の高分子鎖が互いに相手粒子側に拡散して一体化している状態がある.この,高分子粉体粒子接触界面での分子鎖拡散の有無を熱刺激電流(TSC)スペクトルスコピーを利用して調べた.試料高分子粉体として,平均粒径15μmのアクリル系静電粉体塗装用塗料を用いた.圧縮圧力,圧縮後の熱処理の温度および時間等の試料成形条件を種々変えて円板状圧縮粉体試料を作成し,それらの破断強度,TSCスペクトルを測定した.また,試料の形状を走査型電子顕微鏡(SEM )で観察した.これらの実験結果から,破断強度の大きい試料のTSCスペクトルには,溶融固化試料で観測されるTSCバンドと同じ温度領域に,新たなTSCバンドが出現することが見だされた.このバンドの相対強度から,粉体粒子界面での高分子鎖拡散を定性的には調べられることがわかったが,このバンド強度と破断強度との相関をより定量的に調べるためには破断強度のより定量的な測定が必要であることも判明した.今後は,厚さ1 mm程度の粉体圧縮層の剪断強度を精密に測定できる測定器を開発し,TSCによる高分子粉体粒子界面での分子鎖拡散の問題を定量的に調べる予定である.

高性能エレクトレットの開発

エレクトレット化エアフィルタには専らポリプロピレン(PP)が使用されている.しかし,フィルム用として一般に利用されているPPの,温度に対する電荷安定性はそれほど高くなく,60℃,80%R.H.の環境では比較的短時間のうちに電荷の大半は消失する. そこで,PPの高次構造を制御し,高度に安定化したエレクトレットを作成することを試みた.このために,メルトインデックス値が0.5g/10分,重量平均分子量5.95×105という,通常はフィルム用には使用されない,高い分子量のPPを用いるとともに,無極性造核剤も添加してみた.これらのPPに種々の熱履歴を与えたあとエレクトレット化して,その電荷貯蔵能力を熱刺激電流 (TSC) スペクトルスコピーにより評価した.また,それらの高次構造を知るため,広角X線回折像の観察,示差走査熱量測定,密度測定等を行った.電荷安定性に対して得られた結果と試料高分子の高次構造との関係を考察した結果,造核剤添加と適切な熱処理で,低融点のクリスタリットを高融点のクリスタリットになるよう再結晶化させることでエネルギー的に深い電荷トラップを導入でき,高安定化エレクトレットが実現できることがわかった.

複写機用トナーの帯電特性の研究

電子写真用2成分系現像材の接触・摩擦帯電については多くの研究があるが,それらはすべて,トナーとキャリヤから成る電気的孤立系での接触・摩擦帯電として扱っている.しかし,実際の複写機では,キャリヤはマグネットローラーにより現像すべきところまで搬送されるさい電気的にローラーと接触していて,トナーとキャリヤは電気的には孤立系ではない.そこで,トナーとキャリヤの接触・摩擦帯電特性を,トナー・キャリヤを電気的孤立系と非孤立系の両条件で,接触・摩擦回数の関数として測定可能な装置を開発して調べた.その結果,孤立系ではトナーの帯電は200回程度の接触・摩擦回数で飽和することが判明した.しかし,非孤立系では接触・摩擦回数の増加により,孤立系と同様に,急速に帯電量は増加すが,飽和することなく緩やかに増加し続けることがわかった.また,これまでトナーに添加される電荷制御剤の研究とくらべ,キャリヤに主眼をおいた研究は少なかったが,今回帯電キャリヤのTSCスペクトルを初めて観測することができた.

発表論文・学会発表・特許申請など

解説

  • 池崎和男:熱刺激電流スペクトロスコピーとその高分子固体物性研究への応用,   静電気学会誌,24 (2000) 193-200 .

口頭発表

  • T. Ogiwara and K.Ikezaki: Thermally stimulated currents in cured resins of electrostatic powder coating. Proc. 6th Int. Conf. on Dielectric and Related phenomena (September 2000, Spala, Poland) p.104-104.
  • M. Shimizu and K. Ikezaki: Thermally stimulated current spectroscopic detection of change in higher order structure of ultrasound-irradiated polypropylene. Proc. IES-ESA Joint Sympo. on Electrostatics ( September 2000, Kyoto ) p.135-142
  • T.Takanashi and K. Ikezaki: Electric properties of plasma treated FEP films: IAS 2000 Annual Meeting World Conf. on  Industrial Application of Electrical Energy ( October 2000, Rome, Italy ) pp.631-635.
  • 中山文夫,池崎和男:高分子量ポリプロピレンエレクトレットの電荷安定性(静電気学会,2000.9)
  • 桑原論次,池崎和男:高分子粉体試料熱刺激電流スペクトルにおよぼす試料粉体層熱収縮 の影響(静電気学会,2000.9)
  • 中山文夫,池崎和男:ポリプロピレンエレクトレットの高温熱処理による電荷安定化(静電気学会 2001.3)
  • 石川武人,池崎和男:モデルトナーの摩擦帯電特性(静電気学会 2001.3)

その他

  • 池崎和男:熱誘起電流スペクトロスコピーとその応用(電気学会東北支部主催学術講演会, 2000.10)
  • 池崎和男:プラズマ処理FEPの高温電気伝導(静電気学会研究会 2001.1)

学位論文

修士論文

  • 辛島将之:高分子粉体系における粒子界面分子鎖拡散の熱誘起電流スペクトルスコピーによる検出
  • 中山文夫:[Mg3(SiO5)2(OH)2]造核剤添加ポリプロピレンフィルムの電荷安定性

卒業論文

  • 石川武人:トナーの摩擦帯電特性
  • 石川哲也:温度可変傾斜板法による摩擦帯電電荷量測定装置の試作
  • 鈴木健:振動法による粉体付着力の測定
  • 松田雄二:高分子粉体層の電気伝導特性

進路

日立製作所,東芝,アンリツ,コニカ, 慶応義塾大学大学院理工学研究科

研究助成

  • 文部省科学研究費:高分子粉体帯電特性の熱誘起電流スペクトル法による評価

Dept. Applied Physics and Physico-Informatics