2001年度 池崎研究室

1. 構成

教授1,修士2年2,学部4年4,計7名

2. 研究成果

(1)帯電機能回復効果を考慮したトナー帯電評価法の提案

複写機2成分現像剤の帯電特性評価法として,トナー流動性因子を排除し,また,キャリヤの帯電機能回復を考慮した,「キャリヤ落下法」と名付けた新たな評価法を提案した.試作した装置では,キャリヤ・トナーの系が電気的に孤立した系と,キャリヤがトナーと接触・剥離するたびに,キャリヤを接地した電極板に触れさせるという,電気的に孤立されていない系での帯電評価が可能である.本研究室で作成した疑似トナーの帯電特性を「キャリヤ落下法」で評価したところ,孤立系ではキャリヤ・トナーの帯電は急速に飽和した.しかし,電気的非孤立系での実験結果は,キャリヤの帯電機能の回復があり,急速な帯電飽和は観察されなかった.また,外部キャリヤメーカーの協力を得てシリコン系コート剤で被覆されたキャリヤも作成し,このキャリヤと研究室作成疑似トナーとの組み合わせでも同様の実験を行った.その結果,キャリヤ・トナーの組み合わせが変わっても,定性的には同様の結果が観測され,提案した手法は実際の複写機での現象機構を解明するうえで有用であることが確認された.

(2)結晶性高分子粉砕による高次構造変化のTSCにおよぼす影響

代表的結晶性高分子であるポリプロピレンを用いて,粉砕にともなう高次構造変化がTSCスペクトルにどのように反映するか調べた.観測されたTSCスペクトルは,フィルム試料のものとは著しく異なり,通常の結晶欠陥によるTSCバンド出現温度よりかなり低温側にブロードなバンドが現れ,粉砕の進行とともに,結晶欠陥の大きさが増大し,局所的な非晶化に近い乱れが生成されることが推察された.また,粉砕後種々の温度で熱処理した試料からのTSCスペクトル観測から,150℃以上の高温熱処理試料では非可逆的なα1-α2結晶転移をすることがわかた.

(3)開回路TSCスペクトル修正法

開回路TSC強度は試料と電極間の空気層の厚さに直接的に依存する.したがって,試料厚さがTSC測定中変化する場合は,観測されたTSCスペクトルには試料固有の成分の他に試料厚さの変化に起因する成分が含まれる. この試料厚さ変化に起因する成分を除去して試料固有のTSCスペクトルを求めるための修正式を提案した. 提案された修正式は2つの項から成る.第1項は観測TSC強度と試料厚さ変化量に依存し,第2項は残存帯電電荷量と試料厚さ変化率に依存する.この修正式を実際の高分子粉体に適用するため,さまざまな高分子粉体の層厚温度依存性とTSCスペクトルを測定した.これらの実測データを用いて観測されたTSCスペクトルを修正した結果は修正式からの定性的予測と一致した. つぎに,提案されたTSCスペクトル修正法で最も重要な役割を果たす試料高分子粉体層厚温度変化に対して,粉体層成形圧力と粉体粒子径の影響を詳細に調べた.その結果,成形圧力が大きいほど,また,粉体粒子径が大きいほど,粉体層厚の温度による変化は小さく,TSCスペクトルにあまり影響を与えないことがわかった.

3. 発表論文・学会発表・特許申請など

  1. T. Ogiwara and K. Ikezaki: Thermally stimulated currents in cured resin of electrostatic powder coating. IEEE Trans. on dielectric and electrical insulation. 8 (2001) 531-537.
  2. M. Ikegami and K. Ikezaki: Effects of heat-treatment on the charging characteristics of a quaternary ammonium charge control additive. J.Electrostatics, 51&52 (2001) 117-123.
  3. T. Ishikawa and K. Ikezaki: Charging characteristics of two-component developers for copiers in electrically isolated and unisolated systems. Proc. of 4th Int. Conf. on Applied Electrostatics ( Dalian, 2001) p.420-424.
  4. Y. Arita, S. S. Shiratori and K. Ikezaki: A method for detection and visualization of charge trapping sites in amorphous parts in crystalline polymers. Proc. of 4th Int. Conf. on Applied Electrostatics ( Dalian, 2001) p.42-46.
  5. Kazuo Ikezaki: Thermally stimulated current spectroscopy of polymers. (reported at 2001 MRS Fall Meeting, Symposium EE: Electroactive Polymers and Their Applications as Actuators, Sensors, and Artificial Muscles, November 26-30, 2001, Boston)
  6. 有田洋介,池崎和男:核形成剤添加ポリプロピレン・エレクトレットの電荷安定性,静電 気学会誌,25 (2001) 222.
  7. 橋本竜憲,池崎和男:低温粉砕ポリプロピレンの熱刺激電流スペクトル,静電気学会, 平成13年9月
  8. 桑原論次,池崎和男:高分子粉体圧縮層の開回路熱刺激電流スペクトル補正法について, 静電気学会,平成14年3月
  9. 橋本竜憲,池崎和男:低温粉砕ポリプロピレンの結晶構造と熱刺激電流スペクトル,静電 気学会,平成14年3月
  10. 米国特許:第6294216号「粉体荷電装置及び方法並びに粉体塗装装置及び方法」(2001年 9月25日)

4.学位論文(修士論文,卒業論文)

修士論文:

桑原論次:高分子粉体試料熱刺激電流スペクトルにおよぼす試料粉
体層熱収縮の影響

橋本竜憲:低温粉砕ポリプロピレンの熱刺激電流スペクトル」

卒業論文:

北原大介:電荷制御剤外添キャリヤによるトナー用バインダー樹脂
の帯電

油井孝太郎:高分子粉体層の誘電率におよぼす粉体充填率の影響

横田佑介:PMMAキャストフィルムの帯電性のキャスト条件依存性

永江泰亮:高分子摩擦帯電特性の温度依存性

5.進路(卒業後の進路)

東京電力     日立製作所     東芝

6.研究助成

文部省科研費:基盤研究(C)(2)11650058


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics