2003年度 横井研究室

構成

助教授:横井康平

博士2年:松原裕樹

学部4年:青木拓也 石橋晃一 臼井裕貴 岸井悟

研究成果

a.水素結合を考慮した経験的アセチレン分子間ポテンシャルの研究(松原裕樹)

アセチレン結晶は133Kにて固相から固相への相転移があることが実験で確認されている。高温側の相(Pa3)で主要な分子間相互作用は、ファンデル ワールス相互作用であると考えられ、6-exp型の原子ー原子ポテンシャルを用いた古典的な分子動力学シミュレーションによって格子定数などの特性をよ く再現できる。ところが高温相でうまくいったポテンシャルを使っても低温側の相(Cmca)への相転移は起こらない。これは単純な6-exp型のポテン シャルでは低温相で主要になっているCC間の3重結合と水素原子の間に生じる水素結合が考慮されていないためであると考えた。そこで分子間CH相互作用 をこの効果を取り入れるように修正することでアセチレンの固体間相転移を再現できるようなポテンシャルを作ることを試みた。水素結合のポテンシャルとし てはexp-exp型のポテンシャルを採用し、これを6-exp型に加えたものを新しいCH間ポテンシャルとした。数千通りのパラメータの組のそれぞれ に対し低温(4.2K)、高温(141K)におけるMDシミュレーションを行ない、格子定数、昇華熱を実験値と比較した。その結果、いくつかのパラメー タセットにおいては単純な6-exp型では起きなかった相転移が起きることがわかった。しかし低温相での空間群がCmcaになったものは一つもなかった ため、まだ根本的な改良が必要であると思われる。

b.立方晶窒化炭素の第一原理分子動力学シミュレーション(青木拓也)

窒化炭素は六方晶と立方晶の結晶が実験で得られている.それはダイヤモンドに匹敵する硬さを持つ可能性があるが,合成された量が微量でありそれらの物性はよくわかっていない.一方,計算による研究では六方晶について第一原理擬ポテンシャル法による計算が行われているが,立方晶については無いため,それについて計算で結晶格子定数,融点などの基本的な性質の検討と気相成長のシミュレーションを行った.計算規模が大きくなるため前者は炭素3原子,窒素4原子の周期境界条件で1000?5000Kの温度範囲で行い,格子定数はほぼ実験と同じである0.34nmを得た.また融点は2700K付近にあるような結果がでた.気相成長は真空層を入れた3次元周期境界条件下で炭素原子,あるいは窒素原子を結晶面に近づけた場合の様子を観察し,予想される結果を得た.

c.異方性交換斥力項を用いたアセチレン結晶構造シミュレーション(石橋晃一)

MDシミュレーションでは従来、分子間相互作用の計算にBuckingham型ポテンシャルなどの等方的な原子間ポテンシャル関数を使用して、それぞれの原子に働く力の和から分子に働く力を求めていた.その範囲内では従来再現できていなかったアセチレンの極低温での結晶構造を、異方性ポテンシャル関数を用いることで正しく再現することを試みた.用いた関数型はファンデルワールス斥力項の指数因子ににアセチレン分子の相対角度に依存した異方性を持たせたものであり,アセチレン分子と同じ対称性を持たせてある.ポテンシャルパラメータとして,炭素?炭素間関数固有のもの,水素?水素間固有のもの,共通の異方性因子などの組み合わせ数の膨大な探索を行った.しかし,従来の等方的関数の場合よりも結果の低温結晶構造が改善されたパラメータの組もあるが,満足できる結果は得られなかった.

d.ベンゼンの多用途ポテンシャル関数(横井康平)

古典力学分子動力学シミュレーションにおいて用いられる分子間ポテンシャル関数は常温・常圧の条件で用いられることを想定して開発されることが大部分であろう.しかし,その利用価値を高めるためにはそれらの条件を超えることが大切である.
ベンゼンの結晶構造と振動特性のMDシミュレーションが広い温度範囲・圧力範囲で可能である精密なポテンシャル関数を考案した.それは基本的には従来と同じように,ファンデルワールスの斥力項と引力項,そしてクーロン相互作用項をもつ原子間ポテンシャル関数の総和で表される比較的単純なものである.しかし,従来のファンデルワールス関数はポテンシャル曲線の谷の位置,幅,そして深さを調整できる3パラメータのバッキンガム型であっても,室温付近での信頼性しか期待できなかった.その原因は谷の付近での曲率に問題があると考え,シフトしたバッキンガム型関数を用いることにより適用温度範囲を広げることを試みた.その結果は一般的に利用されているポテンシャル関数である,AMBER, OPLS, CHARMMと比較され,結晶構造,振動特性ともに広い温度範囲に渡って改善された.また,それに伴って結晶構造の圧力依存性も改善された.

研究発表

K. Yokoi,
Intermolecular potential function of benzene for the MD simulation of structural and vibrational properties,
International Conference on Molecular Simulations and Computational Science Workshop 2004, PB29, Tsukuba International Congress Center, Tsukuba, Japan, 13-15 Jan 2004.

学位論文

学士論文

青木拓也:立方晶窒化炭素結晶の第一原理分子動力学シミュレーション
石橋晃一:異方性交換斥力項を用いたアセチレン結晶構造シミュレーション

進路

大学院,他


Dept. Applied Physics and Physico-Informatics