2004年度 田中研究室

構成

助教授

田中敏幸

修士2年

内野佳高,寺村直道,中島健

修士1年

田村悠樹,水尾佳弘、羽田徹也,村川正貴、本山比佐夫,吉野寿美

学部

荒牧典幸,川村景太,久保島春樹,小池亜弥,寺崎聡義,
天満真弓,山口星志,若宮大輔

進路

・ユニクロ
・NEC
・ソニー
・大学院
・フジテレビ
・日立ソフト
・NTTデータ
・大学院
・大学院

研究成果

(1)作曲・編曲のための楽音のMIDIデータ自動作成システムに関する研究

音楽と工学を結びつけた研究、特に自動採譜の研究は古くから行われており、様々な方法で行われている。しかし、実用化にいたるような成果はいまだに見られていない。本研究では、MIDIデータの書き換えのしやすさに着目し、作曲・編曲のための高精度のMIDIデータ作成システム完成を目的とした。
楽器演奏のWAVEデータから、MIDIデータを作成するシステムを考案した。実験で用いた各サンプルの解析精度は76.0%~90.6%だった。これは音長の認識誤差の影響が大きく、それ以外の項目については、96.1%~100%の高い精度で解析を行うことができた。

(2)捕捉衛星数変化時の誤差軽減についての研究

GPS(Global Positioning System; 全地球測位システム)は1970年代前半から米国国防総省により開発が着手され、1993年から正式に運用が開始された最新の人工衛星による3次元測位システムである。現在,6つの軌道上にそれぞれ4個の衛星を配置し予備の衛星も含め30衛星で運用されている。単独測位は、相対測位に比べて精度は落ちるものの、簡易・安価な装置のみで利用が可能である。単独測位の精度を向上させることで、その有用性・利便性からさらに広い分野で用いられるようになるのではないかと考えている。
GPS衛星は常に地球の周囲を回っているため、単独測位において測位中に使用される衛星は幾度となく切り替えられる。その切り替え前と切り替え後では測位点が乱れてしまい、安定した測位ができないことが問題となっている。そこで本研究では、測位計算における重み付けの新手法を提案し、実験、シミュレーションを通して単独測位における捕捉衛星数変化時の誤差を軽減し、現状の測位の精度・確度も同時に改善することを目的とする。
単独測位において、重み係数を仰角に関連づけた新手法を用いることで、切替誤差を軽減することができた。

(3)回転補正による虹彩認証の精度改善の検討

電子商取引やネットオークションが頻繁に行われるようになった現代では個人認証の強化が社会的に必要とされている。代表的な個人認証の方式はキャッシュカードなどの所有物によるもの、暗証番号などの知識によるもの、そして個人の身体的特徴(バイオメトリクス)を利用するものがある。中でもバイオメトリクス認証は盗聴、盗難、忘失、紛失の恐れのある知識や所有物の認証に比べて有効である。そのバイオメトリクス認証の中でも個人の虹彩を用いた方式は人の目の内部器官であるため拘束感も少なく非常に高い認証率を誇っている。しかしながら虹彩認証は撮影時に回転してしまった画像に対しての認証率は悪い。そこで本研究では虹彩画像に回転補正を加えることで精度がどの程度改善されるかについて検討していく。
回転補正を加えることで精度、精度改善率ともができた。今後は各画像に対して最適なパラメータを設定することなどが課題である。

(4)手の甲の静脈パターンによるバイオメトリクス認証

近年、犯罪のハイテク化といったセキュリティ上の観点から、また電子情報機器のネットワーク化に伴う電子化社会の発達による、プライバシー保護の観点から、国や企業のみならず個人においても「個人認証」の必要性が高まっている。現在利用されている主な個人認証の手段にはパスワードによる認証、ICカードなどの所有物認証、個人の体や行動の特徴を利用して行うバイオメトリクス認証がある。このうちバイオメトリクス認証は偽造が困難で紛失することが無く、また精度が高いという特徴を持つ。
その中でも比較的新しい「静脈認証」は、最もシェアの高い「指紋認証」より高精度であり心理的抵抗感が少なく、最も高精度で知られる「虹彩認証」とほぼ同程度の精度でありながら、コストが格段に安く、安全性・経済性・簡便性・社会的重要性を最もバランスよく満たしていると考えられる。
本研究では、撮影画像中に必ず存在してしまう”輝度むら”に対応させることで、テンプレートマッチングの弱点を補い、より忠実な二値化画像を得ることで精度改善を目指す。さらに、登録画像の切り出しを自動化させ、前処理作業を削減し、認証の簡略化を図る。
“輝度むら”に対応させるため、局所ごとに二値化を行うことでテンプレートマッチングの弱点を補い、精度を改善することができた。また、前処理を削減し、登録画像の切り出しも自動で行うことで、認証の簡略化に成功した。

(5)特徴点移動量による顔面神経麻痺の客観的評価法

顔面神経麻痺の評価は顔面動作の左右差を検査者が肉眼的に比較して評価しており,日本では10項目40点評価法が一般的に用いられている.しかしこの方法は検査者の主観が入りやすく,再現性においても問題が指摘されている.また患者の症状が回復していく様子も評価しにくい.これらの問題点を解決するために,現在モアレ法やマーカー法,顔部品特徴量抽出による方法など,様々な客観的評価法が提案されているが,これらの手法もそれぞれ問題があり,広く臨床で用いられるには至っていない.そこで本研究室の先行研究において,被験者の正面顔写真の顔面内に多数の特徴点を配置し,表情運動前後での特徴点の移動量を求めることによって麻痺度を評価するシステムを提案した.これによって被験者への負担軽減を実現し,正確な評価を得ることができた.そこで顔面上特徴点の二次元座標でおこなっていた評価を,三次元的な座標を求めることでさらに正確な評価を目指す.また昨年までの5つの表情運動の評価に加え,残りの5つの表情について評価をおこなう.

(6)GPSにおける二次元測位の精度改善

GPSは米国国防総省により開発された人工衛星による測位システムである。GPSは手軽で信頼性の高い測位システムとして民間にも広く普及している[1]。近年では携帯電話にも搭載されるなどGPSはユビキタス時代に重要な役割を担うことになるだろう。しかし,街中でGPSを使用する際には、建物などの障害物により可視GPS衛星が3機以下となってしまい3次元測位が出来なくなる。2004年12月9日に行った日吉駅前の走行実験では時間割合にして約4割は可視衛星が3機以下となることが判明した。よって、少ない衛星を用いて測位を行う手法について検討を行うことは意義のあることであると考えられる。
本研究では2次元測位の様々な手法を提案し、シミュレーションを行い、その有効性を考察した。
2次元測位では高さを固定する方法よりも、時計誤差を固定する方法のほうが有効である。しかし、時計誤差と高さ方向を固定する方法は用途によって使い分ける必要がある。

(7)肺腫瘍の悪性度評価

腫瘍の細胞診は、細胞検査士がパパニコロウ染色された検体のスクリーニングを行い、次にその結果を基に病理医が診断するという流れで行われている。したがって細胞診は一つ一つの細胞について複数人検査するため、非常に時間と手間、費用のかかる作業である。また、医師の経験的判断に基づいているため標準化や精度管理も必要とされる分野である。
そこで本研究では、肺の細胞診自動化の支援を目的としたシステムの作成やデータの算出と検討を行った。細胞診自動化や腫瘍細胞診断の標準化と精度管理のためには、良悪性の判定基準を知る必要がある。今回は、いくつかの特徴量を提案して、それを算出する画像処理システムを構築した。そして得られたデータより、悪性度評価に有効な評価基準の検討を行った。
良性腫瘍と悪性腫瘍の差が認識できるのは、核面積であった。今後は核の分離や、さらにデータ数や特徴量の種類を増やし、様々な状態の画像に対応できるように研究を進めることで細胞診の自動化システムの精度を上げることが可能になるであろう。

(8)GPSにおける悪条件下での精度改善に関する研究

GPS(Global Positioning System)は衛星を利用した測位システムである。GPS測位方法には単独測位(SPS : Standard Positioning Service)、DGPS、RTK-GPSなどがある。単独測位・DGPSは、簡易かつ安価な装置のみで利用が可能であり、搬送波位相を用いて測位するRTK-GPSなどと比べて精度は落ちるものの、その利便性の高さから精度向上が期待されている。しかし、測位に使える衛星数が少ない・まわりに障害物がある等の悪条件下で測位を行った結果、精度が悪くなることがわかった。本研究は悪条件下における単独測位、DGPSの測位精度向上を目的としている。
DGPSなどの基準局のデータを用いることによって衛星の位置誤差を補正し、そ
れを用いて測位計算を行うことによって、衛星数が少ない場合でも精度を改善できることが確認できた。また、実際の距離と擬似距離の差であるdrを重み係数に利用することによって、マルチパスなど擬似距離に大きな誤差が生じた場合に精度を改善できることがわかった。

(9)画像処理による胃の腫瘍の分類に関する研究

現在、胃の腫瘍の病理組織診断は、異型性、多形性に注目し、経験をつんだ病理医によって手動で行われている。病理医の不足や診断にかかる時間、労力の点でも問題があるが、判別は医師の経験によるところが大きいため、客観的かつ定量的な評価によって判別基準を設けることは、医学上非常に重要である。本研究では、良性腫瘍、悪性腫瘍および境界病変(胃線腫)の病理組織画像について取り扱い、定量的な評価を行って,胃の腫瘍の分類を試みる。
本研究では、画像処理の手法を用いて、胃の腫瘍の分類を客観的に分類する方法を考案する研究の成果について報告した。胃の腫瘍の細胞組織画像より、まず腺管領域を切り取り、細胞核領域と細胞質領域に分割し、特徴量を計算・評価し、ステップワイズ判別分析を行った結果、本システムが診断に有効な客観的分類方法として応用できることがわかった。
今後は、核領域に対する特徴量が少ないので、テクスチャ特徴を算出し、精度向上を目指す。

発表論文・学会発表・特許申請など

原著論文

  • 田中敏幸,國弘幸伸:聴神経鞘腫の形状パラメータ評価法-高信頼度簡易計測法の提案-,生体医工学,Vol.42, No.2, pp.48-54, 2004
  • 内野佳高,田中敏幸:胃の腫瘍診断のための形状特徴量の検討,パソコンリテラシ,第29巻,第7号,pp.13~18,2004
  • 柴田悠紀,田中敏幸:画像診断のための基底細胞癌の形状抽出,パソコンリテラシ,第29巻,第8号,pp.23~28,2004
  • 田中敏幸,根本順子,太田真奈美,國弘幸伸:表情運動時の特徴点移動量による顔面神経麻痺評価法,Facial Nerve Research,Vol.24,pp.81-83,2004

国際会議

  • Tetsuya Hada, Toshiyuki Tanaka : Study on Ionospheric Delay in GPS Standard Positioning Service, SICE Annual Conference 2004, FAI-3-1, pp.226- 229
  • Hisao Motoyama, Toshiyuki Tanaka, Masaru Tanaka : Features of Malignant Melanoma based on Color Information, SICE Annual Conference 2004, WPI-3-1, pp.230- 233
  • Ken Nakajima, Toshiyuki Tanaka : Study on Accuracy Improvement under Bad Condition in GPS, SICE Annual Conference 2004, FAI-3-2, pp.234- 238
  • Yuki Tamura, Toshiyuki Tanaka : Personal Authentication by Analysis of Iris, SICE Annual Conference 2004, TAII-8-1, pp.239- 242
  • Toshiyuki Tanaka, Naohiko Kubo : Biometric Authentication by Hand Vein Patterns, SICE Annual Conference 2004, P-07, pp.249- 253
  • Yoshitaka Uchino, Toshiyuki Tanaka, Teruaki Oka : Study on Diagnosis of Gastric Tumors using Feature Parameter, SICE Annual Conference 2004, WPI-3-2, pp.254- 257
  • Sumi Yoshino, Toshiyuki Tanaka, Masaru Tanaka : Application of Morphologyfor Detection of Dots in Tumor, SICE Annual Conference 2004, WPI-3-3, pp.591- 594
  • Toshiyuki Tanaka, Satoru Torii, Kunio Shimizu, Masaru Tanaka, Hiroshi Oka : Pattern Classification of Nevus with Texture Analysis, The 26th International Conference of the IEEE BMES
  • Toshiyuki Tanaka, Reina Yamada, Kunio Shimizu, Masaru Tanaka, Hiroshi Oka : A Study on the Image Diagnosis of Melanoma, The 26th International Conference of the IEEE BMES
  • Toshiyuki Tanaka, Junko Nemoto, Takanobu Kunihiro : The Evaluation of Facial Palsy by Amount of Feature Point Movements at Facial Expressions, The 26th International Conference of the IEEE BMES
  • Toshiyuki Tanaka, Junichi Takamura : A Study on Improvement of Error in GPS Standard Positioning Service, ION GNSS2004

口頭発表

  • 田中敏幸,根本順子,太田真奈美,國弘幸伸:表情運動時の特徴点移動量による顔面神経麻痺評価法,第27回日本顔面神経研究会,平成16年6月
  • 田中敏幸,岡輝明:胃の腫瘍診断のための定量化特徴量の検討,第93回日本病理学会総会,平成16年6月
  • 内野佳高,田中敏幸,岡輝明:胃の腫瘍診断のための特徴量の検討(仮),第21回センシングフォーラム,平成16年9月
  • 中島健,田中敏幸:GPSにおける悪条件下での精度改善に関する研究(仮),第21回センシングフォーラム,平成16年9月
  • 川村景太,田中敏幸:GPSにおける使用衛星数変化時の誤差軽減についての研究,GPS/GNSSシンポジウム2004,平成16年11月
  • 羽田徹也,田中敏幸:GPSにおける重み係数の検討,GPS/GNSSシンポジウム2004,平成16年11月
  • 山口星志,田中敏幸:GPSによる2次元測位の精度向上について,GPS/GNSSシンポジウム2004,平成16年11月

学位論文

修士論文

  • 内野佳高:画像処理による胃の腫瘍の分類に関する研究
  • 中島健:GPSにおける悪条件下での精度改善に関する研究

卒業論文

  • 荒牧典幸:作曲・編曲のための楽音のMIDIデータ自動作成システムに関する研究
  • 川村景太:GPSにおける捕捉衛星数変化時の誤差軽減に関する研究
  • 久保島春樹:回転補正による虹彩認証の精度改善の検討
  • 小池亜弥:手の甲の静脈パターンによるバイオメトリクス認証
  • 天満真弓:特徴点移動量による顔面神経麻痺の客観的評価法
  • 山口星志:GPSにおける二次元測位の精度改善
  • 若宮大輔:肺腫瘍の悪性度評価

研究助成

  • 慶應義塾大学学事振興資金(特A研究),「GPS単独測位システムの精度改善に関する研究」

Dept. Applied Physics and Physico-Informatics