第8回 物質探索・設計セミナー (2/26(金))のお知らせ ”交流スピントロニクスの最前線”

【第8回 物質探索・設計セミナー(神原研)のお知らせ】
スピントロニクスと呼ばれる研究分野は, トンネル磁気抵抗(TMR)ヘッドをはじめとして高密度な情報ストレージに必須となった技術をもたらしました.
今回はスピントロニクスの一分野 “磁気電気容量効果”の先駆者である海住英生先生をお招きし最新の研究を中心に講義いただく予定です.
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講演者: 海住 英生 氏
(北海道大学電子科学研究所 准教授)
題目: 交流スピントロニクスの最前線
日時: 2016年2月26日(金) 13:00-14:00
場所: 慶應義塾大学 矢上キャンパス 14棟201号室 (セミナールーム1)
要旨: 電子の電荷とスピンの2つの自由度を利用する「スピントロニクス」は今世紀に入り輝かしい発展を遂げてきた。中でも、強磁性体/絶縁体/強磁性体から構成される強磁性トンネル接合は、室温にて巨大なトンネル磁気抵抗(TMR)効果を示すことから、国内外で盛んに研究が進められてきた。一方で、強磁性トンネル接合は室温にてトンネル磁気キャパシタンス(TMC)効果も示す[1,2]。最近、我々は室温にて150%を超えるTMC比を観測することに成功し、そのメカニズムがDebye-Fröhlichモデルにより説明できることを明らかにした[3]。本モデルによると、更なるTMC比の向上も期待できる。
このような磁場によりキャパシタンスが変化する「磁気キャパシタンス(MC)効果」は、強磁性トンネル接合のみならず、近年盛んに研究が行われているマルチフェロイック材料においても発見されている。最近では、磁気ナノグラニュラー膜[4]、分子スピントロニクス素子[5]、強磁性単電子トランジスタ[6]においても発見されており、MC効果に関連する当該研究分野が急速に発展している。このような観点から他の様々な材料・物質・デバイスにおいても巨大なMC効果が発見される可能性は極めて高く、学術的に広く展開していくものと期待できる。本講演では、このような新たな学際領域である「交流スピントロニクス」について、最近の動向を中心に紹介する。
[1] H. Kaiju et al.: J. Appl. Phys. 91, 7430 (2002).
[2] P. Padhan et al.: Appl. Phys. Lett. 90, 142105 (2007).
[3] H. Kaiju et al.: Appl. Phys. Lett. 107, 132405 (2015).
[4] N. Kobayashi et al.: Nat. Commun. 5, 4417 (2014).
[5] J.-Y. Hong et al.: SPIN 4, 1440015 (2014).
[6] T.-H. Lee et al.: Sci. Rep. 5, 13704 (2015).

*本件の連絡先: 物理情報工学科 神原陽一 (E-mail: kamihara_yoichi@appi.keio.ac.jp)